あなたの命、課金しますか?
「渚、早く行って‼︎」
スカートのポケットに、スマホが入っていた。
これで今、桃子を写真に撮り、アプリに登録すればいいんだ。
そしてそのまま、見殺しにすればいい?
だって、どうせこのままじゃ逃げられない。
炎の壁を通り抜けないことには、助からない。
その前に、一酸化炭素中毒になるだろう。
私、1人なら、1人だけなら__。
「渚?」
スマホを手に押し黙る私を不審に思ったのか、桃子がこっちを見上げる。
浅い呼吸を繰り返し、私の真意を確かめるように。
助かる手段は【これ】しかない。
私はスマホのカメラを向けた。
咳き込んでいる桃子に。
私の唯一の親友。
私が1度は捨てた親友。
そして再び、捨てようとしている。
桃子は、いつも裏表がない。
どんなひどいことを言われても、どんなひどいことをされても、恨むどころか許してしまう。
怒るほうがよっぽど楽なのに。
もし私が、寿命を奪い取ろうとしていることを知っても、きっと桃子は許してくれるだろう。
それが、私の大好きな親友だ。
「渚?」
「桃子__」
私は、スマホのシャッターボタンに手をかける。
そして言ったんだ。