あなたの命、課金しますか?
「152歳、お誕生日おめでとう‼︎」
そんな賑やかな声に、私は目を開く。
見知らぬ顔が並んでいる。
いや、前の時に居たのが、枕元に座っていた。
「おばあちゃん‼︎これ、こないだ150歳の時におばあちゃんが言ってた、アプリのやつだよ‼︎」
若い女が携帯の画面を差し出した。
「てか、覚えてんのかよ?」
男のほうが、バカにしたように笑う。
「覚えてるに決まってんじゃん‼︎おばあちゃん、起き上がって【HAPPY SCHOOL】って書いたんだよ?絶対、昔なにか思い入れがあるんだよ」
「そんなもんかなー。それより不死身じゃねーの?」
「長生きって言いなさいよ。おばあちゃん‼︎これ、おばあちゃんの名前を入力したら、マイページに入れたよ‼︎昔、おばあちゃんがやってたんだね?」
なにを言ってるのか全く分からなかったが、目を凝らしてみる。
目もほとんど見えない。
白い膜が張っていて、画面が見えなかったが、久しぶりに光が目を差して涙が浮かぶ。
涙と目の焦点が合う。
携帯の画面が一瞬だけ、見えた。
遠い遠い、遥か昔、私はこれを嗜(たしな)んでいた。
【渚】というのは、私の名前だ。
同時に、記憶の波に溺れていく。
【葉月渚】の下の表示は確か【寿命】を表していた。
そうだ、私はそれを確認したかったんだ。
私の寿命を__。