あなたの命、課金しますか?


「渚(なぎさ)おはよう」


「桃子(ももこ)おはよう」


私たちは、いつも一緒だ。


私、葉月渚と、篠田桃子はずっと仲良しだった。


「昨日、レアガチャ出たんだ」


「うそ⁉︎なにが出たの?見せて見せてー‼︎」


私は、桃子の携帯を覗き込む。


朝のSHRが始まるまでの時間を、携帯ゲームの話で盛り上がるのが日課だ。


周りの女子はもっと華やかで、黄色い話題で笑い合っているけれど、私は桃子と【好きな人】の話なんかしたことはない。


お互いはっきりと口にはしないけれど、その手のガールズトークはしてはいけない気がしていたからだ。


「あ、桜庭(さくらば)さんだ」


桃子はそう言ったきり、黙り込んでしまった。


教室に入ってくる、桜庭朋美(ともみ)には空気を変える力がある。


なぜか私も黙った。


さっきまで幾ら【課金】したか競い合っていたのに、息すら止めて、桜庭さんが私たちの横を通り過ぎるのを待ったんだ。


桜庭さんは私たちを一瞥することもなく、自分の席につく。


すぐにクラスメイトに取り囲まれるのは、まるでアイドルみたいだ。


そんな時、私は思う。


桃子の存在が有り難いと。


だって桃子は__。


私と同じ【ブス】だから。




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