あなたの命、課金しますか?


「おはよう‼︎」


明るい声でみんなに挨拶をする。


少しくらい注目を浴びたって、私はもう怖くない。


私は変わった。


10kg以上のダイエットと、コンプレックスだった目を整形したからじゃない。


もちろんそれがキッカケではあるが、湧き上がってくる【自信】が、私を大きく変えたんだ。


いつも伏し目がちで、誰かの耳に入らないよう喋り声は小さく、体を丸めて暗示をかけていた。


私はここに居ないのだと。


周りが私を居ないものだと扱っていたんじゃない。


私自身が、私というものを消し去っていたんだ。


「今日、モールに行かない?」


井沢さんが当たり前のように私を誘う。


「行く行くー‼︎」


笑って答えてから、チラッと桃子を見る。


机に覆い被さるように、なにかを見ているようだ。


「見るのやめなよ、ブスが移るから」


井沢さんグループの誰かが言った。


それを引き金に、嫌な笑い声が広がっていく。


ビクッと桃子の体が震えたのが分かった。きっと今、桃子は笑い声しか聞こえていないだろう。


こうやって、私たちは嘲笑いの対象だったんだ。


桃子には気の毒だが、私は2度と【そこ】には戻りたくない。


その為だったら【何年】だってくれてやる。



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