あなたの命、課金しますか?


それは放課後だった。


1日中、ずっとドキドキし通しで、授業も全く耳に入らない。


ずっと三鷹くんを遠くから見ていたが、それらしいことは何もなく__ガチャはなんの後悔もないのか?


不審に思いながら、校門を出た時だった。


「葉月、ちょうど良かった。これ、朋美たちに渡しといてくんねー?」


三鷹くんに呼び止められる。


三鷹くんは、サッカーのユニホーム姿で小脇にボールを抱えていた。


「これって、遊園地のチケット?」


「そう。今度の日曜な。葉月も来れるだろ?」


「うん、行く」


頷いて、差し出されるチケットを受け取る。


三鷹くんと2人きりで話せることが嬉しくて、私の頭から【ガチャ】を引いたことは綺麗さっぱり消えていた。


ひゅーっ、と風が吹く。


「あっ‼︎」と声を上げた時には、大事なチケットが飛んでいった。


せっかく三鷹くんと一緒にジェットコースターに乗れるチャンスだ。


慌ててチケットを拾おうと手を伸ばした時、ちょうど三鷹くんも拾おうと手を伸ばしたんだ。


私たちの手が一瞬だけ、重なり合う。


【好きな男子と手を握る】が、叶った瞬間だった。


たとえアクシデントだったとしても、私は三鷹くんの手の温もりを忘れない。


そしてそれを、独り占めしたいと強く願った。



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