あなたの命、課金しますか?


女子がきゃーきゃー悲鳴を上げる。


大袈裟に怖がって、隣の男子の腕にしがみつくんだ。


とはいっても、先頭を行く三鷹くんに縋りつくのは桜庭さん。


私は美奈と抱き合って、真っ暗闇を進んでいく。


時折、飛び出してくるお化けに驚きつつ、さっきの南くんの言葉を思い出していた。


どこか憐(あわ)れむように、裕也はやめろと。


それはでも多分、三鷹くんがモテるからだ。相手があの桜庭さんだと知っていても、告白は絶えないという。


そんな気苦労を思ってのことだろう。


それでも私は、三鷹くんが好きだ。


彼と付き合えるなら__。


「きゃっ‼︎」


後ろから追いかけてくるリアルお化けに、悲鳴を上げた時、グッと強く抱き締められる。


「朋美、大丈夫か?」


「えっ、私は__」


「なんだ、葉月か。なんかみんなとはぐれてさ」


「そ、そうなんだ」


「あ、わりぃ」


慌てて体を離そうとした三鷹くんの腕を、気づけば私は掴んでいた。


「もうちょっと、もうちょっとこのまま」


震える声を振り絞って言った。


あらん限りの勇気も振り絞って。


すると__再び、強く抱き締められた。


アクシデントでもなんでもない、私だと分かっていて三鷹くんは抱き締めてくれたんだ。


強く、とても強く。







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