あなたの命、課金しますか?


「何かいいの出たの?」


「えっ⁉︎な、なんでもないよ‼︎」


スマホを覗き込もうとした朋美を間一髪、押しのけた。


だって、こんなの見せられるわけがない。


口を尖らせていた朋美だったが、優衣に話しかけられてすぐに興味を失ったようだ。


その場を離れ、女子トイレの個室に飛び込む。


宝物を包み込むようにしていた両手を、ゆっくりと開く。


画面が、これまでにない黄金の輝きを放っている。


間違いない。


究極のレアガチャを引き当てたんだ。


桜庭朋美と三鷹裕也という、個人名も出ている。


これで2人は別れるはず。


お似合いのカップルが、破局を迎えるんだ。


そしてその後釜__ううん、私が三鷹くんの彼女になる。


思わずスキップでもしてしまいそうな、軽やかな足取りで教室に戻ると、なにやら空気がおかしい?


「渚、大変なの」


優衣は目に涙を溜めて、私を見上げた。


その傍らには、項垂れている朋美が肩を震わせている。


「__どうしたの?」


尋ねてはみたが、もう答えは分かっていた。


まさか、こんなに早く?


「裕也と別れたんだって」


代わりに答えたのは美奈だった。


2人は両側から泣いている朋美の肩を抱いて、励ましている。


「朋美、なんでも話して。私は朋美の味方だから」


ちょっと悲しげに言ってみる。


腹の中で高らかに笑いながら__。





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