野獣に恋するヘタレちゃん
◇
『パンが食べたい』と言う佐々木さんの要望で訪れた、石釜焼きパンが有名な少し高級なイタリア料理のレストラン。
「鎌田っち、相変わらずだなあ…別にこんなかしこまったとこじゃなくてもいいのに。」
「や?接待ですから。」
笑う佐々木さんに鎌田さんが楽しげに答えた。
うちの会社でも争奪戦が起こる程人気なデザイン事務所の所長である佐々木さんは、いつもゆったりとした空気の中に居る。
佐々木さんは木元さんがお気に入りだと鎌田さんはいつも言っているけど…
鎌田さんと合う時って、佐々木さんは顔が緩みっぱなしでご機嫌なんだよね、いつも。
そして、鎌田さんも凄く楽しそう。
「佐々木さん、パンばっかり食うなよ。」
「いいだろ。減るもんじゃねーし」
「や、減ってんでしょ、食った分だけ。」
ほら、今日も楽しげな笑顔。
いいな…私にもこんな笑顔向けてくれないかな。
「おい、金木」
佐々木さんて、いつも癒しオーラがもの凄い出てる気がするんだよね。
私も癒しオーラを出せばいいのかな?
でも、どうやって出すんだろう、癒しオーラって。
「おい、金木!出せよ。」
「えっ?!無理です、いきなりは!」
「は?資料は?」
し、しまった!
つい仕事から思考が逸れてしまった。すみませんと謝りながらタブレットを出して佐々木さんに渡すと、なんとも意味ありげな微笑みが返ってくる。
「ねっきーも相変わらずだね。」
…も、もしかして見透かされてる?
顔が急激に熱くなって、これはマズいと思わずトイレに駆け込んだ。
ハンカチで扇いで頬の熱を冷ます。何度か深呼吸をして気持を落ち着かせてからトイレを出た。
「おい」
「ひい!」
何故、トイレの前に鎌田さん?!
「あ、あの…お話の途中で席を外してしまってすみません。さ、佐々木さんにも失礼を…。」
「あの人、帰った。」
か、帰った?!
「基本、自由人だからさ。気にすんな。」
優しい言葉の後に頭に乗っけられた掌。
ど、どうしよう…嬉しすぎて、顔がまた熱くなる。
「お前、本当に大丈夫かよ。結構顔が赤いぜ?」
「だ、だ、大丈夫です!本当に!すみません、荷物を取って来ます!」
歩き出そうとしたら、今度は腕を掴まれた。
か、勘弁してください!
これ以上スキンシップ(と言えるのかは不明)されたら、私は倒れます!
「鞄持って来たから。お前も疲れているみたいだし、少しどっかに入って休んで行こうぜ」
どこかに入って休む?!
私の前を行く鎌田さんは至って真剣。
少し歩いた所にあった、ちょっとオシャレなカラオケボックスに入った。
…すみません、如何わしい事をチラッとでも考えて。
反省しながら、部屋に入って、上着を脱いで座って…
鎌田さん…教えて下さい。
「あー疲れた。」
どうして、鎌田さんが私に膝枕をしているのでしょう。
「何とか、資料にも目を通してもらえたし、あとは佐々木さんのやる気次第だな…」
「は、はい…」
えっと…確か、『具合が悪い』と言う事になってたのは私だったはず。
や、うん、いいんだけどね?
本当に具合が悪いってわけでもなかったし…。
だけど鎌田さんて、一体私をどう扱いたいんだろう。
『お前には無理』
まあ、貧相な身体の持ち主の私ですから、相手にされていないのは間違いないんだろうけど。
意識していないからこそ、こうやってサラッと膝枕が出来るんだろうしね。
顔を腕で隠している鎌田さん。見えている整った唇が綺麗で、触れたい衝動に駆られる。
少しだけ…。
震える手を持ち上げた。けど、指先が唇に触れた途端に手首を掴まれた。
パチリと開いた瞼の先のギラリと光る瞳に捕らえられ、一瞬にして体全体がフリーズする。
掴まれている手首がジンジンする…。
「…お前さ。」
「は、はい」
「俺と付き合えよ。」
…………何のドッキリ?
.
『パンが食べたい』と言う佐々木さんの要望で訪れた、石釜焼きパンが有名な少し高級なイタリア料理のレストラン。
「鎌田っち、相変わらずだなあ…別にこんなかしこまったとこじゃなくてもいいのに。」
「や?接待ですから。」
笑う佐々木さんに鎌田さんが楽しげに答えた。
うちの会社でも争奪戦が起こる程人気なデザイン事務所の所長である佐々木さんは、いつもゆったりとした空気の中に居る。
佐々木さんは木元さんがお気に入りだと鎌田さんはいつも言っているけど…
鎌田さんと合う時って、佐々木さんは顔が緩みっぱなしでご機嫌なんだよね、いつも。
そして、鎌田さんも凄く楽しそう。
「佐々木さん、パンばっかり食うなよ。」
「いいだろ。減るもんじゃねーし」
「や、減ってんでしょ、食った分だけ。」
ほら、今日も楽しげな笑顔。
いいな…私にもこんな笑顔向けてくれないかな。
「おい、金木」
佐々木さんて、いつも癒しオーラがもの凄い出てる気がするんだよね。
私も癒しオーラを出せばいいのかな?
でも、どうやって出すんだろう、癒しオーラって。
「おい、金木!出せよ。」
「えっ?!無理です、いきなりは!」
「は?資料は?」
し、しまった!
つい仕事から思考が逸れてしまった。すみませんと謝りながらタブレットを出して佐々木さんに渡すと、なんとも意味ありげな微笑みが返ってくる。
「ねっきーも相変わらずだね。」
…も、もしかして見透かされてる?
顔が急激に熱くなって、これはマズいと思わずトイレに駆け込んだ。
ハンカチで扇いで頬の熱を冷ます。何度か深呼吸をして気持を落ち着かせてからトイレを出た。
「おい」
「ひい!」
何故、トイレの前に鎌田さん?!
「あ、あの…お話の途中で席を外してしまってすみません。さ、佐々木さんにも失礼を…。」
「あの人、帰った。」
か、帰った?!
「基本、自由人だからさ。気にすんな。」
優しい言葉の後に頭に乗っけられた掌。
ど、どうしよう…嬉しすぎて、顔がまた熱くなる。
「お前、本当に大丈夫かよ。結構顔が赤いぜ?」
「だ、だ、大丈夫です!本当に!すみません、荷物を取って来ます!」
歩き出そうとしたら、今度は腕を掴まれた。
か、勘弁してください!
これ以上スキンシップ(と言えるのかは不明)されたら、私は倒れます!
「鞄持って来たから。お前も疲れているみたいだし、少しどっかに入って休んで行こうぜ」
どこかに入って休む?!
私の前を行く鎌田さんは至って真剣。
少し歩いた所にあった、ちょっとオシャレなカラオケボックスに入った。
…すみません、如何わしい事をチラッとでも考えて。
反省しながら、部屋に入って、上着を脱いで座って…
鎌田さん…教えて下さい。
「あー疲れた。」
どうして、鎌田さんが私に膝枕をしているのでしょう。
「何とか、資料にも目を通してもらえたし、あとは佐々木さんのやる気次第だな…」
「は、はい…」
えっと…確か、『具合が悪い』と言う事になってたのは私だったはず。
や、うん、いいんだけどね?
本当に具合が悪いってわけでもなかったし…。
だけど鎌田さんて、一体私をどう扱いたいんだろう。
『お前には無理』
まあ、貧相な身体の持ち主の私ですから、相手にされていないのは間違いないんだろうけど。
意識していないからこそ、こうやってサラッと膝枕が出来るんだろうしね。
顔を腕で隠している鎌田さん。見えている整った唇が綺麗で、触れたい衝動に駆られる。
少しだけ…。
震える手を持ち上げた。けど、指先が唇に触れた途端に手首を掴まれた。
パチリと開いた瞼の先のギラリと光る瞳に捕らえられ、一瞬にして体全体がフリーズする。
掴まれている手首がジンジンする…。
「…お前さ。」
「は、はい」
「俺と付き合えよ。」
…………何のドッキリ?
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