異邦人

「通関部門って忙しそうだよねー。絶対やりたくないわ」
「でも、輸出乙仲も大変そうですよ」
「そうよ。通関部門と客に挟まれて苦労してるわ」
そんなこんなで話題は社内の人の話に切り替わった。
「木原さんって誰とでも仲良いですよね」
「え？そう？」彼女はパンを一口サイズに切って食べるとそう応えた。
「俺、黒川係長苦手なんですけどこの前楽しそうに話してたんで」と言うと彼女は「あぁあ」と思い出したように声を上げるとすぐに「私もあの人苦手」と即答した。
「え!?そうなんですか？でも木原さん、黒川係長のこと褒めまくってたじゃないですか。てっきり好感を持っているのかと思いましたよ」と言うと彼女は笑顔になって「増田くんがそう思ったなら良かった」と言ってきた。
「いや、全然良くないですよ。何が良いんですか？」
「分からなくて良いよ。ただ、増田くんもそう思ったなら彼もそう思ったってことよね。だからそれは私にとって都合が良いって言ったの」
「は？」益々意味が分からなかった。
彼女は、ワインを一口飲むと「じゃぁ、今日は特別に苦手な黒川さんと仲良くなれる方法を教えてあげるね」と自慢顔で言ってきた。
「お願いします」
「彼は入社した当時、恐らく苦労したんでしょうね。だから、自分よりも下等な、というか若い子が頑張ってないのを見ると幻滅して見下すわけ」
「はぁ、だから俺見下されてたんですね」
「そういう人って一見冷たい人かと思われるけど実は情に厚く、彼の苦労話を興味を持って聞いて勞ってあげれば心を開いてくれるものよ」
「あぁ。そうなんすね。すごいっすね。色んな人のこと分かるんですか？」
「大体ね。マネージャーはね、今の人間関係に不満を持ってるのよ、恐らく。きっと、うわべだけじゃなく気心知れた仲間が欲しいんだと思う。だからまっすぐぶつかって行けば彼は喜ぶと思うな」
「あぁ、そうなんですね。そこまで分かるんだったら内田君とかどうですか？」
「内田さんは・・・良くわからない」
「え、じゃぁ。佐藤くんとかは？」