異邦人
「私も行くよ!」
「なんか、あんま気乗りしないっすよね。上司とかいるし、気を遣うのかと思うと・・・」
「でも、自由行動もあるしさ!私、楽しみなんだけど!」
「え?そうなんですか?まぁ、そう言われるとそうかもしれませんが・・・」
「増田くんも来るならもっと楽しみだ!」そう彼女が笑顔で言うので俺は不意を突かれてドキッとした。「お、俺も木原さんが来るから嬉しいです」と小声だが彼女に合わせたように言うと彼女は「あはは」と笑って「じゃ、私先行くね!」と言うと事務所に向かって歩き始めた。俺は全然社員旅行を楽しみにしていなかったけど彼女が来ると分かったら自分でも単純すぎる位急に楽しみに思えた。
彼女と入れ違いに今度はコンビニから小暮さんが出てきた。小暮さんは癇癪持ちで日頃から怒鳴ってばかりいるため周りからは腫れ物に触るような扱いをされていた。俺も、職場の中では黒川係長の次に苦手な男性だった。
「おい、増田!そこで何してんだよ」
「あ、税関からたった今戻りまして・・・」
「がっはっは。お前さっきまで木原となんか話してただろう。コンビニから見てたぞ」
「え?そうなんですか?あの、社員旅行に行くかっていう話をしてました」
「そうだったか。俺も社員旅行に参加するからよろしくな!」
「あ、はぁ・・・」
「ところであいつ(木原)は最近大丈夫なんかな」
「え?」
「あいつ最近仕事でミスばっか起こしてるからなぁ・・・」
「え!?そうなんですか?」
「あいつ仕事を捌くのは早いんだけどなぁ。ただ、最近はミスが多いからマネージャーも何かあったのかって心配してる。まぁ、普段から一生懸命頑張ってるのは分かるんだけどミスの連続はあまりよくねーな」
「はぁ・・・そうですね」
「じゃぁな」そう言うと小暮さんは大股歩きで偉そうに去っていった。俺は、木原さんが仕事でミスを連発していることを知らなかったので内心驚いた。俺の前では落ち込むことも愚痴ることも彼女は全くしなかった。大丈夫だろうか、そう思った瞬間彼女のミスが俺のせいではないかとふと思った。俺と食事をしてからおかしくなったのではないかと僭越ではあったが思った。思わざるを得なかった。確実に俺の影響は受けてると思った。そう考えると俺にも責任を感じて木原さんを益々ほっとけないと思うようになった。
木原さんのことが気になって仕方なかった。仕事の合間に俺は休憩を取ろうと思って喫煙所を訪れた。既に喫煙所の中には黒川係長と木原さんと同じ年の久我さんがいてタバコをふかしながら談笑していた。
「俺、最近木原さんに『可愛いねー』って言ったんですよ」と久我さんの声がして俺はタバコを取り出す動作に緊張が走った。
「そしたら『知ってるー!』って言ってきて、おいこいつ馬鹿かよって思いましたよ」
「あーあいつ謙虚じゃねーよな。俺もこの前『最近綺麗になったんじゃないか?』って言ったら『私に惚れたら火傷しますよ』って言ってきてアホか!って思わずつっこんだよ」
と黒川係長もその時のことを思い出しながら笑った。
俺は動ずることなくタバコを吸っていた。
「大概信じるんですよね。俺が褒めたりすると。嬉しそうに笑ったりして、あぁこいつ分かってないんだなーって思います」
「あー木原は見た目美人だけど中身アホだからなぁ。本当にもったいねー」と笑いながら黒川係長も嘆いた。
二人が去った後も俺はただタバコを吸い続けていた。彼らに賛同することも否定することも出来ないし、木原さんを慰めることも今後ないだろうと思った。これだから俺はダメなんだろうなと思った。
「なんか、あんま気乗りしないっすよね。上司とかいるし、気を遣うのかと思うと・・・」
「でも、自由行動もあるしさ!私、楽しみなんだけど!」
「え?そうなんですか?まぁ、そう言われるとそうかもしれませんが・・・」
「増田くんも来るならもっと楽しみだ!」そう彼女が笑顔で言うので俺は不意を突かれてドキッとした。「お、俺も木原さんが来るから嬉しいです」と小声だが彼女に合わせたように言うと彼女は「あはは」と笑って「じゃ、私先行くね!」と言うと事務所に向かって歩き始めた。俺は全然社員旅行を楽しみにしていなかったけど彼女が来ると分かったら自分でも単純すぎる位急に楽しみに思えた。
彼女と入れ違いに今度はコンビニから小暮さんが出てきた。小暮さんは癇癪持ちで日頃から怒鳴ってばかりいるため周りからは腫れ物に触るような扱いをされていた。俺も、職場の中では黒川係長の次に苦手な男性だった。
「おい、増田!そこで何してんだよ」
「あ、税関からたった今戻りまして・・・」
「がっはっは。お前さっきまで木原となんか話してただろう。コンビニから見てたぞ」
「え?そうなんですか?あの、社員旅行に行くかっていう話をしてました」
「そうだったか。俺も社員旅行に参加するからよろしくな!」
「あ、はぁ・・・」
「ところであいつ(木原)は最近大丈夫なんかな」
「え?」
「あいつ最近仕事でミスばっか起こしてるからなぁ・・・」
「え!?そうなんですか?」
「あいつ仕事を捌くのは早いんだけどなぁ。ただ、最近はミスが多いからマネージャーも何かあったのかって心配してる。まぁ、普段から一生懸命頑張ってるのは分かるんだけどミスの連続はあまりよくねーな」
「はぁ・・・そうですね」
「じゃぁな」そう言うと小暮さんは大股歩きで偉そうに去っていった。俺は、木原さんが仕事でミスを連発していることを知らなかったので内心驚いた。俺の前では落ち込むことも愚痴ることも彼女は全くしなかった。大丈夫だろうか、そう思った瞬間彼女のミスが俺のせいではないかとふと思った。俺と食事をしてからおかしくなったのではないかと僭越ではあったが思った。思わざるを得なかった。確実に俺の影響は受けてると思った。そう考えると俺にも責任を感じて木原さんを益々ほっとけないと思うようになった。
木原さんのことが気になって仕方なかった。仕事の合間に俺は休憩を取ろうと思って喫煙所を訪れた。既に喫煙所の中には黒川係長と木原さんと同じ年の久我さんがいてタバコをふかしながら談笑していた。
「俺、最近木原さんに『可愛いねー』って言ったんですよ」と久我さんの声がして俺はタバコを取り出す動作に緊張が走った。
「そしたら『知ってるー!』って言ってきて、おいこいつ馬鹿かよって思いましたよ」
「あーあいつ謙虚じゃねーよな。俺もこの前『最近綺麗になったんじゃないか?』って言ったら『私に惚れたら火傷しますよ』って言ってきてアホか!って思わずつっこんだよ」
と黒川係長もその時のことを思い出しながら笑った。
俺は動ずることなくタバコを吸っていた。
「大概信じるんですよね。俺が褒めたりすると。嬉しそうに笑ったりして、あぁこいつ分かってないんだなーって思います」
「あー木原は見た目美人だけど中身アホだからなぁ。本当にもったいねー」と笑いながら黒川係長も嘆いた。
二人が去った後も俺はただタバコを吸い続けていた。彼らに賛同することも否定することも出来ないし、木原さんを慰めることも今後ないだろうと思った。これだから俺はダメなんだろうなと思った。