異邦人
夜になると今度は「肝試しをしよう」と黒川係長が言い出した。「怖いぞ~墓も通るからな~」とニヤニヤしながら黒川係長が言うと橋本が「マジ怖いのやだ~」と言って俺の隣に逃げて来た。「怖がり」と俺が笑って言うと「うるさい」と橋本が可愛く言ってきた。俺はその顔を見ながら木原さんの怖がる顔も見てみたいなとふと思い俺は何気なく木原さんの方を見ると彼女は可愛い顔ではなく大げさに嫌な顔をして黒川係長を睨んでいた。
「じゃぁ、肝試しするメンバーを決めてくれ」と黒川係長が言うとみんなでどうやって決めようかと話し合いになった。すると木原さんが「私、立候補したい人がいる!」と言ってきたのでその場にいる男性陣が俺も含めドキッとした。「私、小暮さんと肝試ししたい!」とあまりにも意表のついた答えだったのでみんなが反応に困っていると小暮さんが「なんで俺なんだよ」とあくまでも冷静に聞いてきた。
「え?だって顔が怖いから幽霊も驚いて逃げるだろうと思って」
「なに、ふざけたこと言ってやがる!」
明らかに小暮さんを怒らせるようなこと言って一同がヒヤッとしたが木原さんは笑っているだけだった。だけど、小暮さんもそれ以上は怒らなかったので皆一安心した。
すると今まで黙っていた佐藤くんが口を開いた。
「俺、木原さんと肝試ししたいです」
俺は思わず佐藤くんを振り返った。周りの人たちが「おぉー」と冷やかすような声を上げた。木原さんは周りの冷やかしに動ずることなく「え?マジで?立候補されちゃった!良いよ!行こ行こ!」と嬉しそうに応えた。
 俺は嬉しそうな佐藤くんも喜んでる木原さんも見てて腹が立った。関係ないくせに無性に良い気がしなかった。すると隣から「じゃぁ、私たちで行こうよ」と橋本が言ってきた。「おぉ」俺はそう応えると一瞬また二人を見てから「そうだな」と橋本に向かって笑顔で言った。

「もう見ててバレバレだよね~」暗い夜道を歩きながら隣の橋本が言ってきた。
「何が?」
「何がって佐藤くんの態度だよ。木原さんのこと好きなのバレバレだって」
「あぁ、そうか」
「知らなかったの?」
< 32 / 48 >

この作品をシェア

pagetop