異邦人

「まぁ、少しだけだったら・・・」と言うと扉を開けて俺を部屋に招いた。
彼女は動揺することなくテレビの目の前にあるベッドに腰掛けると「ほら、増田くんも座れば?」と言って俺の方を一瞬見た。俺は彼女の隣に腰掛けるとテレビの方を見始めた。
突然の展開に俺は大分緊張していたせいかテレビを見ても全く内容が頭に入って来なかった。だけど、俺はこれをチャンスだと捉えた。俺のすぐそばに彼女がいると思うと俺は意を決してゆっくりと彼女の方に顔を向けた。そして、俺は彼女の綺麗な横顔を眺め始めた。
長い睫毛、高い鼻筋、朱い唇。真剣な表情でテレビを観続ける彼女に俺は釘付けとなった。やがて彼女は俺の視線に気づいたのかこちらを向くことなく「なんでこっちを見るの?」と聞いてきた。
「テレビつまんないです」そう言ったことで追い出されるかと思ったが彼女は俺の方を向くと「じゃぁ、何する?」と言ってきた。
俺が黙って彼女を見つめていると彼女は「なんか今日調子狂う」と言って俺から離れるように立ち上がった。
「木原さん!」
「じゃ、じゃぁこうしよう。トランプ持ってるからババ抜きとか」
「嫌です」
「じゃぁ・・・」
「いいから。隣に座ってくださいよ」
「嫌よ・・・」彼女は俺に背を向けたままこちらを振り向こうとしなかった。
俺は、彼女に近づくと後ろから声をかけた。
「木原さん・・・」
「やっぱ、私寝るわ。あそこにこの部屋の鍵置いてあるから橋本さん達に渡しといてくれない?」そう言って彼女は俺の方を向くと「だから部屋に戻りなよ」と言ってきた。
「木原さん!」
「いいから早く出てって」と言って布団を捲り上げた彼女を見てカッとなった俺はそのままベッドの上に彼女を押し倒した。
「ちょっ!何するの!」
「木原さん」俺が上から彼女を見下ろすと
彼女は黙って俺から目を逸らした。
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