異邦人

チャールズ・ダーウィンの話をしたのを覚えてる？ダーウィンはこう言ったんだよ。
『唯一生き残ることが出来るのは、変化できる者だけである』だから私は変わるしかなかった。この世の中でやっていくには変わるしかなかったんだよ。生きてきて思ったことがある。『面白さは不滅だ』ってこと。みんな面白いことが好きだから、面白くしていれば嫌われることはないと思った。社内の男性からは馬鹿女と思われてるようだけどね。彼らは私のこと『あーこいつ分かってないんだな』と思ってるだろうけど私からしたら『あーこの人、私が分かってないと思ってるんだろうな』と心の中で思ってたよ。分かってるよ、馬鹿にされてることも。分かってないのは私が道化師を演じてることに気づかない彼らの方。
社会人になって栄光を掴んだと思った。自分は昔周りにコントロールされていたけど、今では自分が周りをコントロール出来るようになったと思ってる。全てが私の思い通りになった。明るくなった、みんなからも好かれるようになった。でも、心だけは虚しさが残った。本当の私は内向型の人間なの。だからみんなの前で明るくすることも道化師を演じることも辛くなってきた。何もかも疲れて一人になりたいと思った。可笑しいよね、幼少時代から自分がこうなることを望んでいたはずなのに今はこの地位が辛くて仕方ない。本当に可笑しいよね。

私には夢があった。だけど、別人になっていけばいくほどそのことをずっと忘れていた。そんなある日、私はある小説サイトを見つけた。そこで好きな作家さんと出会った。初めてその作家さんの小説を読んだとき衝撃が起こった。素敵な恋愛小説だと思った。私には絶対こんな素晴らしい作品が書けないと思った。そして私はその憧れの作家さんの作品に夢中になった。だけど、いつしかあることを思うようになった。段々その作家さんの書く物語の展開に不満を持つようになると私の方がもっと良いのが書けるのではないかと思った。私もかつては小説家を目指していた。しかし、彼女のような他の人が書くような素晴らしい小説を自分では書けないと思っていたから私は小説を書こうとは思ってなかった。けれど、その時は自分が如何に文才が無くて質が乏しくても無性に書きたいと思った。そして小説を書き上げて数ヶ月が経った頃、最初は１，２人しか読まれなかった私の小説がいつしか10、15人と増え、小説サイトで私の書いた小説が紹介されると読者が一気に百人と増えた。私は嬉しくてそれからも別の作品を書き始めた。するとまた私の書いた小説がサイトで紹介されることになると、一気に五百人もの読者が増えたの。信じられる？無名のコネ無しの自分がたった３年で５百人の読者に気に入って読んでもらうことが出来た。それで私は思ったの。自分には才能があるんだって、だから私は本格的に執筆活動を始めようと思った。