異邦人
木原さんがトイレに行ったらしい。黒川係長が俺に話をかけてきた。「それにしても、木原は、なんであんなにべっぴんなのに中身がぶっ飛んでるんだろな」と聞いてきたので、そんなの知りませんよ、と思ったことをそのまま言おうかと思ったが「さぁ、どうしてでしょうね」とあえて同調した。「あんなに美人だったら黙ってた方がモテただろうに」と黒川係長が言ったので俺は「でも、それも木原さんの魅力の一つじゃないですか?」と応えた。
木原さんは戻ってくると今度は空いている内田君の隣に腰掛けた。それを見た瞬間、俺の中でなんとも言えない寂しさが全身を貫いた。なぜだか分からないが少しがっかりしている自分がいた。
「どうしたの?」と隣の橋本が聞いてきた。「いや、なんでもない。何の話してたっけ?」俺は、心を入れ替えて橋本の話に集中しようとしたが遠い場所にいても彼らのやり取りはあらゆる雑音をすり抜けて耳に入ってきた。
「へぇ、みんな年上の女性が好きなんだねー。私今年31歳なんだけどもしかして有り?」と彼女が聞くとその場にいる男性陣が一斉に笑い出した。照れながらも「有りです」と応える男性陣の中で一番調子の良い佐藤くんが「当たり前ですよ!木原さんは僕らのマドンナですから!」と彼女を喜ばせることを言うと更に場は盛り上った。俺は会話が気になって、ついあちら側を見てしまった。
すると俺は彼女と目が合った。すぐに俺は目を逸らすと彼女が男性陣に向かって「ありがとう!」と明るい声で言ったのが聞こえた。きっと嬉しさのあまりとびっきりの笑顔で言ったのであろう。
俺はまた恐る恐る彼女の方を見ると彼女は、伏し目がちにお茶を啜ってるところだった。その姿があまりにも妖艶で美しいので俺は憚ることも忘れ見入ってしまった。その場にいる男性陣も見とれているようだった。
「ねぇ、みんなは彼女とかっているの?」
彼女の好奇心とも関心とも取れる質問に内田君以外はみんな彼女がいないと応えると木原さんは「じゃぁ、誰か狙っちゃおうかなぁ~」と意地悪そうに可愛い笑顔で言った。みんなが笑っている中で佐藤くんだけは真剣な顔して「木原さんは彼氏いないんですか?」と聞いた。木原さんは一瞬目を大きく開いて驚いた表情をしたかと思うとすぐにコロッと表情を変えて「彼氏いないよ」と笑顔で応えた。
「ねぇ、聞いてる?」
「え?」
不審がられたのか、冷めたのか分からないが橋本は「私、女子と話してくる」と言うと突然席を立ってどっかに行ってしまった。突然、俺はこの熱狂的混沌の中で独りにさせられてしまった。まるで敵軍のいる基地に放り投げ出された兵士のような心細い気分だった。だからと言って移動しようという気も起きなかった。
俺は諦めたようにまた自らが望んだかのように懐からタバコを取り出し一本吸い始めるとこの孤独の中で流れる時間に身を委ねようと思った。しかし、携帯を見ていたのも束の間予想だにしていなかった出来事が急に舞い込んできた。
木原さんは戻ってくると今度は空いている内田君の隣に腰掛けた。それを見た瞬間、俺の中でなんとも言えない寂しさが全身を貫いた。なぜだか分からないが少しがっかりしている自分がいた。
「どうしたの?」と隣の橋本が聞いてきた。「いや、なんでもない。何の話してたっけ?」俺は、心を入れ替えて橋本の話に集中しようとしたが遠い場所にいても彼らのやり取りはあらゆる雑音をすり抜けて耳に入ってきた。
「へぇ、みんな年上の女性が好きなんだねー。私今年31歳なんだけどもしかして有り?」と彼女が聞くとその場にいる男性陣が一斉に笑い出した。照れながらも「有りです」と応える男性陣の中で一番調子の良い佐藤くんが「当たり前ですよ!木原さんは僕らのマドンナですから!」と彼女を喜ばせることを言うと更に場は盛り上った。俺は会話が気になって、ついあちら側を見てしまった。
すると俺は彼女と目が合った。すぐに俺は目を逸らすと彼女が男性陣に向かって「ありがとう!」と明るい声で言ったのが聞こえた。きっと嬉しさのあまりとびっきりの笑顔で言ったのであろう。
俺はまた恐る恐る彼女の方を見ると彼女は、伏し目がちにお茶を啜ってるところだった。その姿があまりにも妖艶で美しいので俺は憚ることも忘れ見入ってしまった。その場にいる男性陣も見とれているようだった。
「ねぇ、みんなは彼女とかっているの?」
彼女の好奇心とも関心とも取れる質問に内田君以外はみんな彼女がいないと応えると木原さんは「じゃぁ、誰か狙っちゃおうかなぁ~」と意地悪そうに可愛い笑顔で言った。みんなが笑っている中で佐藤くんだけは真剣な顔して「木原さんは彼氏いないんですか?」と聞いた。木原さんは一瞬目を大きく開いて驚いた表情をしたかと思うとすぐにコロッと表情を変えて「彼氏いないよ」と笑顔で応えた。
「ねぇ、聞いてる?」
「え?」
不審がられたのか、冷めたのか分からないが橋本は「私、女子と話してくる」と言うと突然席を立ってどっかに行ってしまった。突然、俺はこの熱狂的混沌の中で独りにさせられてしまった。まるで敵軍のいる基地に放り投げ出された兵士のような心細い気分だった。だからと言って移動しようという気も起きなかった。
俺は諦めたようにまた自らが望んだかのように懐からタバコを取り出し一本吸い始めるとこの孤独の中で流れる時間に身を委ねようと思った。しかし、携帯を見ていたのも束の間予想だにしていなかった出来事が急に舞い込んできた。