イジワルな彼は私を溺愛しています
「また勝負する?」

中島先輩はニヤッと笑って言った。

「意味が分かりません。私の部屋がないのは百歩譲ってしょうがないとして、一緒に寝るわけないでしょうが」

「お前。自分の立場分かってる?」

中島先輩はがらりと雰囲気を変えて言うと私のあごをつかんで上を向かせた。

目の前には中島先輩の顔があって、ドグンと心臓がなるのが分かった。

「自分の立場。いじめられるかどうか。学校で地獄を見るかどうか。お前は俺に脅されてる身だろ」

「……」

つうっと嫌な汗が背中から流れた。
もし、いじめの漫画みたいにトイレに顔突っ込まれたり、パシリにされたり、殴られたり。
想像しただけでぞっとする。

「それなのに俺は一方的に押しつけることなく、勝負をしてやろうとしてるのに嫌ですっておかしいだろう」

かっこよく言っているが、内容は最低だ。

「で、どうする?」

脅されてる身。
………選択肢は少ない。

「………………勝負しましょう。私が勝ったら私の部屋をください。あと、もちろん一緒には寝ません。中島先輩が勝ったら…」

「俺の言うこと一つ聞いて」

「分かりました」

「勝負内容は決めていいよ」

「次の定期テストでより高得点をとったほうが勝ちです」

これなら勝てる。

「分かった」

「定期テストまではどうしますか?」

「俺と一緒に寝るか、自分の部屋をもつかどっちがいい?」

「自分の部屋はなくてもいいです」

「だろうと思った」

中島先輩は立ち上がって言った。

「夕飯は食べた?」

「いえ、食べてません」

「それなら今からどっか食べに行くか」

「分かりました」

ポケットにスマホと財布を突っ込む。

「女ってもっと出かける時は準備するもんじゃないの?」

そうつぶやく中島先輩をほって玄関に向かう。

「無視かよ」

そう言いながら中島先輩は玄関の鍵を閉めた。

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