イジワルな彼は私を溺愛しています
「それは……」

「あ、あの、私も一緒に食べていいですか?」

ん?と思って横を見ると声の主は恥ずかしいのか下を向いていた。

「もちろん、よろしくね。私は水沢有紀です」

「わ、私は伊藤紗知です」

小さい可愛らしい女の子だ。同学年のはずだが、幼く見えてしまう。

声の主__紗知はおどおどしながら亜矢を見た。

「あ、あの……」

「水谷亜矢」

誰が聞いても素っ気ない自己紹介だ。

「ごめんね、愛想悪くて」

愛想が悪い理由は紗知が登場したタイミングが亜矢にとって悪かったのだろが、私は自滅する趣味はないため紗知に本当のことを言うつもりはない。薄情かもしれないけど。

「い、いえ、だ、大丈夫です」

紗知はビクビクしながら座って弁当箱を開けた。

「えっ、すごい!」

その途端、紗知の色とりどりの弁当に亜矢が食いついた。

「あ、あの、食べます?」

「いいの?」

亜矢は確認しているがもうすでに目で何を食べるか選んでいる。

弁当のおかずでここまで態度が変わるのだからたいしたものだ。

「うん、好きなのどうぞ」

「これとこれ貰うねー」

紗知も亜矢の明るさに打ち解けた表情を見せた。

「紗知、これからよろしくねー」

チャイムがなる直前に亜矢が言った。

「うん、よろしく!」

紗知は満面の笑みで自分の席に戻っていった。
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