イジワルな彼は私を溺愛しています
「三人分作りましたけど誰が来るんですか」

机に夕飯を並べながら聞いた。

「相澤潤」

「兄貴、お邪魔します」

玄関を開けるがした。

「あ、君が噂のねぇ。俺、相澤潤。潤って呼んで」

馴れ馴れしい。

「水沢有紀です」

「潤、座れ」

「はい」

潤は和海の隣、私の正面の椅子に座った。

「兄貴が唯一求めた女。やっぱり美人だ」

私を見ながらうむうむと頷く。

「潤、これ以上言ったら首切るぞ」

「分かりました」

潤は大人しく食べ始めた。

和海に対しては真面目らしい。

「で、潤調べてもらいたいことがある」

「ん」

ご飯が口の中に入っているためこれが返事なのだろう。

「俺の学校で有紀に惚れてる奴を洗い出せ」

和海の口からありえないことが聞こてた気がする。

「えっ?そんなことでいいの?」

たしかに私のことが好きなんていう人は少ないだろう。

「ああ」

「ファンクラブに行けばすぐだと思うけど」

…………ん?
ファンクラブ?!あるわけないでしょ!

「知らなかったのか?新入生代表の挨拶で惚れた男が多かったからファンクラブができたんだ」

私は思っていたことを口に出していたらしい。

「でも、そんな素振りなかったし」

「それは兄貴がおさえてたから…」

「黙れ」

和海の氷点下の声に潤は開いていた口を閉じた。

私は席を立って洗い物をする。

台所から見えるダイニングテーブルで二人が何か話していた。

そんな二人を見ながら私は頬が赤くなるのが分かった。

考えてみたらBL漫画を一ヶ月弱読んでいなかったのだ。禁断症状も出る。

これからは家に帰って漫画を読むことも本屋で立ち読みすることもこの家での生活を終えないかぎりできそうにない。

「このままじゃ本当に禁断症状出そう……」

ため息をついて皿を拭く。

禁断症状の出る前にどうにかしないと。そう思えば思うほど、二人に目が吸い寄せられていく。

「はあー、なんか欲求不満の男になった気分だなー」

ふっと笑って最後の一枚の皿を片付けた。
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