イジワルな彼は私を溺愛しています
父は単身赴任中で、兄は東京で一人暮らしをしているらしい。今はこの家に母と二人暮らしだ。

「それで、その男の人にはお礼を言ったの?」

「言った」

「それなら良かったわ。はい、食べましょう」

母はダイニングテーブルに座った。

私も母の正面に座る。

「いただきます」

「そういえば今日はどこに行ってたの?」

「本屋って言ってなかったっけ?」

「ああ、そうだったわね。お母さんは今日新しいアルバイトさんを雇おうと思って面接したんだけどね、なかなかいい人が集まらないのよね」

母は近くのコンビニの店長をしている。それなりに忙しいらしい。

「そうなんだ。私やろうか?」

母のコンビニは家から歩いて3分というバイトをするのにもってこいのところにある。

「え?何を言ってるの?」

「だって、4月から私高校生だよ。たしか、あの高校バイト禁止されてないはずだし。人手ほしいんでしょ?」

「そうだけど。有紀にやってもらうのはちょっと」

「どうして?ちゃんとお金払ってくれるならやるよ」

「ちゃっかりしてるじゃない。まあ、人手がほしい事は確かだしいいかもしれないわね」

「私も頑張るからさ」

「いいわよ。じゃあ、4月になったらお願いね」

私は初めての仕事を手に入れた。
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