イジワルな彼は私を溺愛しています
パチパチパチ。

なんとか、挨拶が言えた。内容は微妙だが、恥をかかずにすんだのだから良しとしよう。

私は一安心して、壇上から降りた。



「良かったわよ~。有紀はやっぱり私の自慢の子だわ」

母が頬に手を当てながら言った。

「お母さん、私聞いてないんだけど」

「何が?」

「私が新入生首席だってこと」

「ちゃんと言ったわよ。有紀が聞いていなかっただけじゃないの」

「ホントに?私聞いてないし」

少し責めるような視線をおくる。

母は私から目を逸らしていった。

「あら、まあ終わった事だしいいじゃないの。今日の夕食はなにがいい?」

「ステーキ」

私は母から視線を逸らさないで言った。

「おお、じゃあ有紀の首席合格のお祝いだな」

父が笑いながら言った。

「じゃあ、行きましょうか」

今日一日テンションが高い母はいつもより高い声でいった。
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