イジワルな彼は私を溺愛しています
*side 和海

なんで有紀がキスされてんの。
俺はたまたま通りかかったところで有紀と野郎がキスしているのを見てしまった。
有紀は俺がキスしたら何かしら突っかかってくるのに(まあ、それも可愛いけど)あいつのキスは何も言わなかった。
どういうことだ?俺よりもあいつの方がいいってことか?

ムカつくどころじゃねぇ。
有紀はあいつの方がいいのか。

俺は有紀をおいて学校を出た。

だが、マンションに行ったら有紀に会う。今有紀と会ったら自分が取り返しのつかないことをしてしまいそうだった。
俺は潤に電話をかけた。
潤は仕事では俺の右腕のような奴だ。
潤の方が年上だが、俺を兄貴と呼ぶ。

「兄貴、何かあったんですか?」
潤の家に入るとすぐに潤がお茶を出しながら聞いてきた。
「ああ、有紀が他の男とキスした」

思い出す度に怒りがわきおこる。

「えっ?嘘!」
「だったらいいけどな。今日、泊まる」

俺は出されたお茶を嫌な記憶を流すように、一気飲みした。

「兄貴、それは有紀ちゃんがそいつに無理やりされたとか、なんか理由があるんですよ」

もし仮にそうだとして、有紀の唇が他の男に触れたという事実だけで怒りでおかしくなりそうなのに。

ブーブー
ポケットからスマホを出して確認すると、画面に有紀と表示されていた。

「電話出なくていいんですか?」

「ああ、別にいい」

「でも、さっきからずっと鳴ってますよ?」

「いいんだよ」

俺は空になったグラスを叩きつけた。

「……兄貴、荒れてますね」

潤が俺をジーっと見てきた。

「何?」

相当、きつい口調になってしまう。

「い、いえ、何でもないですよ」

「なら、見るな」

俺はテーブルにスマホを置いて、ソファに寝転んだ。

「期限、再来週なんでしょう?」

「……ああ」

期限と聞いて、俺は眉をひそめた。

親父が決めたことだ。

俺が有紀を落とすのにかけられる時間は6月17日まで。

その次の日に見合いを親父が勝手にいれた。

相当俺も怒ったが、結局は親父に言いくるめられてしまったのだ。

「ちっ」

まただ。
あいつと有紀のキスが頭にちらつく。

「ああ、ホントなんなの」

はあーと大きくため息をついた。
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