イジワルな彼は私を溺愛しています
『「じゃ、行こうか」「嫌です」「君の返事は聞かなかったことにするよ」「……五人も………」「ごめんねー」』

ブチッ

電話が切られた。

俺は潤にスピードを出すように言う。

「渋滞で無理です」

よりによってこんな時に。

「いいから急げ!」

俺は完全に渋滞に入った時に車から出た。

ひたすら走る。

十分くらい走っただろうか。

ホテルの前で抵抗する有紀と男どもがいた。

体中が怒りで沸騰しそうだった。

俺は近づいて、有紀の近くにいた奴を殴った。

「なんなんだ、こいつ!」

俺を殴りにくる男どもの拳を避けて、震えている有紀を抱きしめた。

「か、和海」

俺にしがみついて泣きじゃくる有紀。

きっと、怖かったんだろう。
俺は有紀を安心させようと背中をさすった。

「おい、お前!」

野郎どもが騒ぎ出した。

俺は有紀を離さずに野郎どもを一瞥する。

「名前を言え」

ビクッと震える野郎ども。

これくらいでビビるなら有紀に手を出すな。

「早く」

「和海、もういいから」

有紀は俺の体をぎゅっと掴んで上目遣いで俺を見た。

この状況でも、この顔は破壊力が半端ない。

「……っ分かった」

俺は野郎どもの写真を一応とってから目の前のホテルに有紀を連れて行った。
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