イジワルな彼は私を溺愛しています
料理を食べ終えてから、父が私に車に乗るように言った。
「どっかに行くの?」
「本宅だ。18日までにそこで礼儀作法を覚えてもらう。もちろん泊まり込みだ。学校には連絡しといたから心配はいらない」
父は私が車に乗ると、自分も後部座席に乗り、運転手に車を出すように言った。
「ちょっと待って。私、和海に連絡しないと」
帰りが遅くなるときは連絡をいれる。
あの後に決めたルールだ。
「ダメだ。和海君のところもそうなっているだろうしな」
「それってどういうこと?」
「和海君は今頃家の人に連れられて、軟禁されていると思う」
「どうして!?」
「有紀と和海君は見合いで初めて会った。世間にはそう示した方が都合がいい」
「都合って……」
そんなのは大人の事情だ。そんなことで軟禁って……。
「そういうことになったんだ。少しの間だけでも協力してくれ。一緒に同棲していたことは目をつむってやるから」
「せこい」
「まあな。どうせなら礼儀作法を身につけて和海君に惚れ直させればいいんじゃんないか」
「惚れ直すって付き合い始めたの一週間前だけど」
「はあ?!その期間にお前、セックスしたのか?!」
父は叫んだ。
「ま、まあ。それがきっかけで」
私も想いを伝えられたしと言おうとしたら
「きっかけ?!」
父が遮った。
「もういい。これ以上言うな」
父はそう言って話題を変えた。