イジワルな彼は私を溺愛しています
ブツブツ言いながら部屋を徘徊してる有紀を見て俺はおふくろに電話した。

「なあ、今俺の部屋来れる?」

『行けないこともないけど、何かあったの?』

「有紀が困ってる。着付けと化粧をしてもらいたい」

『あら、それは大変。今すぐ行くわ』

スマホをしまって有紀を見ると落ち着いたのか、スマホをいじっている。

「有紀」

「ん?」

スマホをのぞき込むと着付けの仕方を検索していた。

「おふくろが今からくる。17時からレクだから急いでくると思うぞ」

「えっ、お母さん呼んだの?!」

有紀はまたあたふたしだした。

「不満か」

「そうじゃなくて、だって緊張するし」

有紀はそう言いながら手ぐしで髪をときはじめた。

「大丈夫だろ」

「でも、」

「入るわよー」

おふくろの声がしてドアが開いた。

「あ、はい」

有紀が慌ててドアの方に行く。

「まあ、これは大変ね」

おふくろは有紀を部屋に押し込んで、俺に出るように言った。

「女の子がオシャレするときは見ちゃいけないの。ほら、出ていく!」

しっしっと手をつけて言ってくるおふくろに苦笑しながら部屋から出た。


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