イジワルな彼は私を溺愛しています
「あなたたち知り合いだったの?」

「助けてくれた人」

「そうなの。うちの子を助けてくれてありがとうね、和海君」

「店長の娘さんですか」

イケメンが言った。

「そうよ。これから和海君と一緒に働いてもらうからよろしくね」

母はそう言ってレジに行った。

私はこのイケメンと部屋で二人になった。

「水沢有紀です。よろしくお願いします」

「ああ」

イケメンはそのまま背を向けてロッカーの方に歩いて行く。

「あの、名前教えてもらってもいいですか?」

「生徒会長だ」

いや、学校も知らないのに役職を名乗られても。

「名前を教えて下さい」

「入学式のとき聞いてなかったか?」

あのときは話せたことに安心して話なんてこれっぽちもきいてません。

「俺のこと知らない奴がこの学校にいたんだ。俺は中島和海」

「それなら、中島先輩ですね」

少しにこやかに言ってみる。

これからの円滑な関係の第一歩だ。

「水沢はレジ担当な。商品の陳列は俺がやる。それと、電子マネーの支払いの時はレジの右下にあるボタンを押せばいい」

「はい」

分かってはいたが簡単な仕事だ。

「分かったなら、レジに入るぞ。いつまでも店長にやらせるのは申し訳ないからな」

中島先輩は自分のロッカーを開けて店の制服を着た。

私もそくささ着替えて母とレジを代わる。中島先輩はもうレジにいた。

「遅れてすみません」

「いや」

中島先輩は、健全な女子だったらきっとキュンとするような笑みを浮かべた。

「ありがとうございます」

ぺこりと頭を下げてレジに行く。
< 9 / 120 >

この作品をシェア

pagetop