イジワルな彼は私を溺愛しています

少し歩いた交差点で、私は和海を見つけた。

声をかけようと腕を振ろうとしたら、和海の隣に女性がいるのが目に映って反射的に腕を下ろした。

どうして腕を下ろしてしまったのか分からないが、そっと二人に近づいた。

心臓はうるさいくらいドクドクしている。

女は和海に腕を絡ませていた。

驚いて急いで和海の顔を確認した。

遠くからでも分かっていたことだ。

和海も嫌そうな顔をしながらも拒絶はしていない。

どうして確認してしまったのか、すぐに後悔した。

ズキン

心臓が嫌な音をたてた。

心臓が、心が叫んでいた。

痛い痛い痛い痛い………………っ!!!

私は気づいたら走って家に帰っていた。




何事もなかったことのように振る舞った。

「ただいま」と和海が帰ってきたら、ちょっぴり声が震えていたかもしれないが「おかえり」と返した。

和海がお風呂に入っている間に脱ぎ捨ててあった上着から、甘い香水の香りがしても気づいていないふりをした。
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