ツンデレ黒王子のわんこ姫

健琉と芽以は、そのあと商品開発室で開発中の抱っこ紐の試作を重ね、休憩を挟んで、近くのデパートへ向かった。

健琉は"クロカン"の商品を取り扱ってもらっているキッズ専門店"kiddy"に足を運ぶためだ。

店長を見つけると

「松田さん、こちらは当社の新入社員で白木です。私の下についてこちらに伺うことも多くなりますのでよろしくお願いします。」

「白木芽以と申します。宜しくお願い致します。」

と、二人で挨拶をする。

店長は、kiddyの子供服をデザインしているデザイナーでもあり、松田夏樹と名乗った。

前髪だけを後ろで結び、サイドとバックの髪は肩まで伸ばしている。

見かけは中性的な男性だが、話すとおネエ口調だった。

「あら、随分可愛い子が下についたのね。まあ、黒田くんには里中くんがいるから、白木さんには興味ないわよね」

「やめてくださいよ、白木が本気にしますから」

「あら、いつも笑って否定しなかったのに心変わりしたの?私もアプローチしていい?」

「いやいや、夏樹さんには亨さんがいるでしょ。浮気したらダメですよ」

"松田さんには彼氏がいるらしい"

「あら、亨は浮気しても怒らないわよ。あいつは両刀だから彼女もいるしね。」

芽以はLGBTには理解を示している。江戸時代、かの有名な殿様が、実は"男色"であった話はあまりにも有名で、芽以の父親もそちら方面の方々には寛容だった。

武道家の中にも男色家は結構いるからだ。

"否定しないってことはやっぱり健琉さんも里中さんと付き合ってるのかな?"

この結婚で求められているものは、家と家との繋がりであって子を産むことではないのかもしれない。

"健琉さんと里中さんのことを応援するためには、私も隠れ蓑になれるように協力しなくちゃ"

この得意先訪問で、芽以の勘違いな"内助の功"への決意が強まったことに健琉は気づいていなかった。

< 10 / 88 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop