ツンデレ黒王子のわんこ姫
二人がkiddyを出て部署に戻った頃には、18時半になっていて、すでに終業時刻を過ぎていた。

健琉のデスクにはなぜか里中葵生が座っており、健琉の帰りを待っていた。

「やあ、君が健琉の担当する新入社員の白木さんだね。僕は里中葵生です。どうぞよろしく。」

葵生は椅子から立ち上がると、芽以ににっこりと微笑んだ。

"この人が里中葵生さん、健琉さんのお相手"

芽以は、真剣に葵生を見つめた。

「存じ上げております。黒田先輩の大切な方ですよね?」

葵生は驚いたように目を見開いたが、

「微力ではありますが、私も黒田先輩を影ながら支えていきたいと思っております。ですので、里中先輩も遠慮なく私に何なりとご用命くださいませ」

と芽以は続けた。

そして、礼儀正しくお辞儀をすると

「それでは、黒田先輩、里中先輩、お先に失礼致します」

と述べて、そそくさと部署をあとにした。

「ねえ!あの子、例の噂知ってるんじゃない?」

葵生は健琉のほうを向いて苦笑した。

「いや、kiddyで夏樹さんが、俺とお前のこと意味深な感じで話してたけど、芽以はスルーしてたし、知らねーんじゃねえか」

と、健琉は気にする素振りもない。

「ふうん、"芽以"ねえ?いつから名前呼びするほど親しくなったの?」

「う、うるせえよ」

健琉が荷物をまとめると、二人は部署をあとにして、夜の繁華街へと繰り出した。
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