ツンデレ黒王子のわんこ姫
「それでは、健琉は芽以さんをどこかをお連れしてあげなさい。門限までにはご自宅に送って差し上げるんだぞ。」

食事が済むと、結納という名の顔合わせ会はお開きとなった。

健琉と芽以は、二人で日本料理店の店先に取り残された。

今日の芽以は、朱色地に撫子の柄模様の振り袖を着ており、一方の健琉も和服の略礼装を着用している

「この格好でどこに行けっていうんだよ」

健琉は、隣に並ぶ芽以に視線を落とした。

髪をアップにして桜の髪飾りをつけている。

背筋をピッと伸ばした優雅な佇まいは、まさに撫子にふさわしい。

"こいつが今日から俺の許嫁 "

つい、先週までは全く想像していない未来だった。

結婚は半年後と言われたが、こいつの本音はどうなのだろう。

"結婚相手を勝手に決められて、相手が俺で不服はないのか?"

ふっとそんな疑問が頭をよぎった。

「お前はいいのか、こんな結婚して。」

「健琉さんこそ、いいんですか?葵生さんがいるのに」

「えっ?」

健琉はあまりの衝撃に言葉が繋がらなかった。

「でも、安心してください。私が隠れ蓑になって、お二人の愛を応援しますから。」

やはり、健琉と葵生が付き合っているという話を芽以は知っていたのだ。

昨日のおかしな違和感は、やはり葵生の勘違いではなかった。

「お前、それどこで,,,。」

「優太く,,,いえ、沢城さんに昨日聞きました。」

「あの、野郎,,,!」

芽以は必死に首を振る。

「大丈夫です。私、何があっても健琉さんについていくって父に伝えましたから。」

誤解を解くことをおろそかにした、というよりも誤解させていたことに気づいてもいなかったのだが、健琉は頭を抱えた。

「勝手に勘違いすんな。俺以外の奴が言うことを信用してんじゃねえよ!」

健琉は芽以の手を引くと強引に、店の駐車場まで連れていき停めていた愛車に芽以を乗せて走り出した。

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