ツンデレ黒王子のわんこ姫
敵襲
月曜日になり、芽以は、出社時間30分前に会社に到着した。
自席に座り、先日、健琉に渡されたオリエンテーションマニュアルに再度目を通しておく。
「おはよう、白木さん」
「おはようございます。黒田さん」
土曜日のことは、まるでなかったかのような態度にお互い困惑していたのだが、ポーカーフェイスの二人は口に出すことはしない。
"なんだよ、普通じゃねぇか"
"やっぱり12時で魔法は解けたのかな"
日曜日、お互いにメールか電話が来るのを待っていたが、一度も音声が鳴ることはなかった。
意地っ張りの健琉は、負けてしまったようで自分から連絡出来ないし、
芽以にとっては、主人の許可がないのに勝手に連絡することは出来ない。
午前中は当たり障りない仕事上の会話をして過ごした。
昼休みになり、健琉は芽以にミーティングルームへ来るよう指示した。
ミーティングルームは大、中、小で3つあり、それぞれランチをしながら会議が出来ることになっている。
一番小さな第3ミーティングルームは、ほとんど使われていなかった。
芽以がミーティングルームに到着すると、すでに健琉と葵生が席に着いていた。
ランチョンミーティングという形をとる以上、健琉は開発中の育児用品の資料を持参しており、営業の葵生も関係書類を準備してきていた。
「お待たせしました」
芽以は抱えてきた包みを広げて、三段の重箱を取り出した。
一番上がおかず、二段目が巻き寿司といなり寿司、三段目がフルーツと和菓子となっていた。
「凄いな、お花見が出来そうだ。」
葵生が、素直に感動を表して言った。
「お茶を入れてきますね」
芽以はにっこりと笑いながら、お箸と皿を並べ終わると、ミーティング室横の給湯室に入って行った。
「健琉、お前、もの凄く優良物件を手に入れたんじゃないのか?この料理も本格的だぞ」
「芽以はものじゃねえよ」
健琉は椅子の背もたれに大きくもたれ掛かりながら言った。
「結納すんだんだろ?このまま結婚すんのか?」
「このままいけば、そうなるだろうな」
健琉は他人事のように言った。
「金曜日に会うまでは、あんなに嫌がってたのにな」
「どんな奴かもわかんねえのに、はいそうですか、って言えるわけないだろ!」
「一緒にいるうちに気に入っちゃったわけだ」
「ぐっ,,,」
健琉は苦虫を潰したような顔をしたが、ふぃと葵生から目をそらしただけだった。
「お待たせしました」
芽以が三人分のお茶と、急須をお盆にのせて戻ってくると
「いただきます」
といって三人は食事を始めた。
「うまい!」
葵生が正直に感想をもらす横で、健琉は黙々と箸を進めている。
「ありがとうございます。お二人が何がお好きかわからなかったので、和洋折衷になってしまいました。」
芽以が申し訳なさそうに言うと
「とんでもない。凄く美味しいよ。ありがとう」
「お前が先に言うな」
と健琉が二人の会話に口を挟んた。
葵生は笑いながら
「じゃあ、ちゃんと気持ちを伝えてあげなよ」
と楽しそうに笑った。
「うまいよ。まあ、花嫁修業ばっかりやってたんだからうまくなかったら詐欺だけどな」
健琉は相変わらずのツンデレぶりだ。
「誉められて嬉しいです」
頬を赤らめる芽以を見て、葵生がクスッと笑った。
「SとMで、なんか二人お似合いだね」
時折、仕事の話を混ぜながら、そうして穏やかな三人の昼休みが過ぎていった。
自席に座り、先日、健琉に渡されたオリエンテーションマニュアルに再度目を通しておく。
「おはよう、白木さん」
「おはようございます。黒田さん」
土曜日のことは、まるでなかったかのような態度にお互い困惑していたのだが、ポーカーフェイスの二人は口に出すことはしない。
"なんだよ、普通じゃねぇか"
"やっぱり12時で魔法は解けたのかな"
日曜日、お互いにメールか電話が来るのを待っていたが、一度も音声が鳴ることはなかった。
意地っ張りの健琉は、負けてしまったようで自分から連絡出来ないし、
芽以にとっては、主人の許可がないのに勝手に連絡することは出来ない。
午前中は当たり障りない仕事上の会話をして過ごした。
昼休みになり、健琉は芽以にミーティングルームへ来るよう指示した。
ミーティングルームは大、中、小で3つあり、それぞれランチをしながら会議が出来ることになっている。
一番小さな第3ミーティングルームは、ほとんど使われていなかった。
芽以がミーティングルームに到着すると、すでに健琉と葵生が席に着いていた。
ランチョンミーティングという形をとる以上、健琉は開発中の育児用品の資料を持参しており、営業の葵生も関係書類を準備してきていた。
「お待たせしました」
芽以は抱えてきた包みを広げて、三段の重箱を取り出した。
一番上がおかず、二段目が巻き寿司といなり寿司、三段目がフルーツと和菓子となっていた。
「凄いな、お花見が出来そうだ。」
葵生が、素直に感動を表して言った。
「お茶を入れてきますね」
芽以はにっこりと笑いながら、お箸と皿を並べ終わると、ミーティング室横の給湯室に入って行った。
「健琉、お前、もの凄く優良物件を手に入れたんじゃないのか?この料理も本格的だぞ」
「芽以はものじゃねえよ」
健琉は椅子の背もたれに大きくもたれ掛かりながら言った。
「結納すんだんだろ?このまま結婚すんのか?」
「このままいけば、そうなるだろうな」
健琉は他人事のように言った。
「金曜日に会うまでは、あんなに嫌がってたのにな」
「どんな奴かもわかんねえのに、はいそうですか、って言えるわけないだろ!」
「一緒にいるうちに気に入っちゃったわけだ」
「ぐっ,,,」
健琉は苦虫を潰したような顔をしたが、ふぃと葵生から目をそらしただけだった。
「お待たせしました」
芽以が三人分のお茶と、急須をお盆にのせて戻ってくると
「いただきます」
といって三人は食事を始めた。
「うまい!」
葵生が正直に感想をもらす横で、健琉は黙々と箸を進めている。
「ありがとうございます。お二人が何がお好きかわからなかったので、和洋折衷になってしまいました。」
芽以が申し訳なさそうに言うと
「とんでもない。凄く美味しいよ。ありがとう」
「お前が先に言うな」
と健琉が二人の会話に口を挟んた。
葵生は笑いながら
「じゃあ、ちゃんと気持ちを伝えてあげなよ」
と楽しそうに笑った。
「うまいよ。まあ、花嫁修業ばっかりやってたんだからうまくなかったら詐欺だけどな」
健琉は相変わらずのツンデレぶりだ。
「誉められて嬉しいです」
頬を赤らめる芽以を見て、葵生がクスッと笑った。
「SとMで、なんか二人お似合いだね」
時折、仕事の話を混ぜながら、そうして穏やかな三人の昼休みが過ぎていった。