ツンデレ黒王子のわんこ姫
健琉が目を覚ましたのは、救急車内であった。
「健琉、わかるか?」
救急車に同乗していた葵生が声を掛けてきた。
「芽以は,,,くっ!」
身体を起こそうとすると全身に痛みが走る。
特に左腕が痛んで上がらない。
シャツの所々に血が付いていた。
「芽以ちゃんも救急車で同じ病院に向かってる」
健琉が意識を失う直前には、芽以の反応はなかった。
とっさに芽以の体と頭を庇ったとは思う。
しかし、健琉に抱きかかえられていたとはいえ、10段の高さを転がり落ちたのだから相当な衝撃だっただろう。
全身を打撲した痛みに耐えながら、救急隊員の質問に答えているうちに、いつの間にか病院に到着していた。
搬送されたのは、会社近くにある大学付属病院の救急室であった。
芽以はすでに搬送されているらしい。
検査の結果、
健琉は全身打撲と左腕の橈骨遠位端骨折と診断された。
肋骨も二本ヒビが入っていたが、内臓の損傷はなく、腕の骨折はひびが入っている程度だったので、肘の上下をギプスで固定すれば手術は必要ないと言われた。
頭部のCTも異常なし。
ただ、意識をなくした時間があったので一泊は入院した方が良いと言われたが、画像で異常がないならと断った。
会計を済ませて、葵生と共に芽以のところへ向かう。
芽以には中野遥香が付き添っていたが、もうすぐ芽以の両親も来ると語った。
救急医によると、芽以には明らかな外傷はないが、まだ目覚めていない。
脳が激しく揺さぶられたときに起こる症状が現れることがあり、多くは後遺症は残さないが、入院して様子をみる必要があるという。
一通り説明を聞いて病室に入ると、芽以は目を閉じて眠っているように見えた。
額や手のひらに擦り傷と打撲の跡が見える。
健琉は芽以のベッドの横に腰かけると、葵生と遥香に帰宅するように勧めた。
二人は残るといったが、芽以の両親が来るなら大丈夫だと伝えた。
葵生と遥香が帰宅すると、病室には心電図の音だけが響いていた。
「芽以」
健琉は、眠っている芽以の額を撫でると、小さな声で呟いていた。
「お前が好きだ」
こうなる前に伝えるべきだったと思う。
もしも、芽以の意識が戻らなかったら,,,
自分のことを忘れてしまったら,,,
"たられば"に捕らわれて、健琉の心は押し潰されそうになっていた。
怪我していない方の右手でそっと芽以の手を握る。
「ずっと俺の側にいて笑っていてほしいんだ」
そう呟いた直後、健琉の頬を一筋の涙が頬を伝った。
パタパタと看護師が走り回る音が聞こえる。
「た、ける、さん」
その声に驚いて顔を上げると、うつむく健琉の顔にゆっくりと手を伸ばし、涙を拭おうとする芽以の姿が映った。
「泣、かないで」
芽以は悲しそうに微笑んだ。
そして、
「庇ってくれてありがとうございました。腕、痛むんですか,,,?」
と、消え入るような声で言った。
健琉は覆い被さるように芽以に身を寄せる。
「痛くないよ。お前が無事でいてくれるなら」
芽以はゆっくりと、健琉の耳元に囁いた。
「私も,,,好きです。健琉さん」
はにかんだ笑顔の芽以か俯いて呟く。
「ずっとお傍に、いさせてください」
頷いた健琉は、そっと芽以を抱き寄せていた。
「健琉、わかるか?」
救急車に同乗していた葵生が声を掛けてきた。
「芽以は,,,くっ!」
身体を起こそうとすると全身に痛みが走る。
特に左腕が痛んで上がらない。
シャツの所々に血が付いていた。
「芽以ちゃんも救急車で同じ病院に向かってる」
健琉が意識を失う直前には、芽以の反応はなかった。
とっさに芽以の体と頭を庇ったとは思う。
しかし、健琉に抱きかかえられていたとはいえ、10段の高さを転がり落ちたのだから相当な衝撃だっただろう。
全身を打撲した痛みに耐えながら、救急隊員の質問に答えているうちに、いつの間にか病院に到着していた。
搬送されたのは、会社近くにある大学付属病院の救急室であった。
芽以はすでに搬送されているらしい。
検査の結果、
健琉は全身打撲と左腕の橈骨遠位端骨折と診断された。
肋骨も二本ヒビが入っていたが、内臓の損傷はなく、腕の骨折はひびが入っている程度だったので、肘の上下をギプスで固定すれば手術は必要ないと言われた。
頭部のCTも異常なし。
ただ、意識をなくした時間があったので一泊は入院した方が良いと言われたが、画像で異常がないならと断った。
会計を済ませて、葵生と共に芽以のところへ向かう。
芽以には中野遥香が付き添っていたが、もうすぐ芽以の両親も来ると語った。
救急医によると、芽以には明らかな外傷はないが、まだ目覚めていない。
脳が激しく揺さぶられたときに起こる症状が現れることがあり、多くは後遺症は残さないが、入院して様子をみる必要があるという。
一通り説明を聞いて病室に入ると、芽以は目を閉じて眠っているように見えた。
額や手のひらに擦り傷と打撲の跡が見える。
健琉は芽以のベッドの横に腰かけると、葵生と遥香に帰宅するように勧めた。
二人は残るといったが、芽以の両親が来るなら大丈夫だと伝えた。
葵生と遥香が帰宅すると、病室には心電図の音だけが響いていた。
「芽以」
健琉は、眠っている芽以の額を撫でると、小さな声で呟いていた。
「お前が好きだ」
こうなる前に伝えるべきだったと思う。
もしも、芽以の意識が戻らなかったら,,,
自分のことを忘れてしまったら,,,
"たられば"に捕らわれて、健琉の心は押し潰されそうになっていた。
怪我していない方の右手でそっと芽以の手を握る。
「ずっと俺の側にいて笑っていてほしいんだ」
そう呟いた直後、健琉の頬を一筋の涙が頬を伝った。
パタパタと看護師が走り回る音が聞こえる。
「た、ける、さん」
その声に驚いて顔を上げると、うつむく健琉の顔にゆっくりと手を伸ばし、涙を拭おうとする芽以の姿が映った。
「泣、かないで」
芽以は悲しそうに微笑んだ。
そして、
「庇ってくれてありがとうございました。腕、痛むんですか,,,?」
と、消え入るような声で言った。
健琉は覆い被さるように芽以に身を寄せる。
「痛くないよ。お前が無事でいてくれるなら」
芽以はゆっくりと、健琉の耳元に囁いた。
「私も,,,好きです。健琉さん」
はにかんだ笑顔の芽以か俯いて呟く。
「ずっとお傍に、いさせてください」
頷いた健琉は、そっと芽以を抱き寄せていた。