ツンデレ黒王子のわんこ姫
「おはよう」

「おはようございます」

健琉が出勤してくると、同じ商品開発部のスタッフが挨拶をしてきた。

しかし、健琉が期待する笑顔も、恥ずかしそうに

"おはようございます"

と、微笑みかけてくる、いつもの可愛い婚約者の姿が見えなかった。

「あれ、白木さんは?」

「黒田さんと一緒じゃなかったんですか?まだ来てませんよ」

そう言うかつての恋のライバル、沢城も、今では健琉と芽以の結婚をお祝いしてくれる頼もしい後輩だ。

「おかしいですね?いつもなら芽以ちゃん出勤してくる頃だけど」

怪訝な顔をする沢城の言葉に、健琉は自分の隣のデスクを見つめた。

芽以が入社以降、こんなことは初めてだ。

ポケットからスマホを取り出しSNSメッセージアプリを開くが着信はない。

「中野さんは何か知らない?」

芽以と沢城と同期で、芽以と仲のよい遥香なら何か連絡が来ているのではと思ったが、

「いえ、私もなにも聞いてません。大丈夫かな?事故とか巻き込まれてなければいいけど」

遥香の言葉に不安がよぎる。

芽以は約半年前に、階段から転がり落ちて大怪我を負ったことがあるのだ。

眉間に皺を寄せて考え込んでいると、不意に内線が鳴る。

「おはようございます、商品開発部、中野でごさいます。え、はい、はい、わかりました」

顔を上げて健琉を見つめる遥香に不安がよぎる。

「白木さんはお休みだと連絡が入ったそうです。理由は言われませんでしたが,,,」

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