ツンデレ黒王子のわんこ姫
「どうした?健琉。珍しいな」

健琉が訪れたのは、クロカンの2件隣のビルに入っているIT企業の社長室。

高校時代からの友人、松原真那人のオフィスだ。

「俺の婚約者がいなくなった」

「えっ?婚約破棄されたの?お前」

「違う。インフルエンザで寝込んで会社をやすんでるらしいんだが、どうも怪しいんだ」

健琉はスマホを取り出して、再度SNSのメッセージアプリを確認する。

やはり、着信はない。

前回怪我で自宅療養していたときですら、芽以は欠かさずに状態報告してきていた。

実に健琉に忠実なワンコなのに、突然連絡が途絶えるなんて信じられなかった。

「ほう、で、ワンコ姫探したいんだな。手がかりを探し中,,,と」

健琉が芽以に渡していた携帯は、真那人が作成した位置確認アプリが入っている。

さらに、インターネットのプロバイダー設定しているので、芽以が検索をかけた項目も、アクセスした履歴もわかるようになっている。

「防犯のためとはいえ、実際に検索かけることになるなんてな」

真那人は面白そうに笑いながらコンピューターを操作する。

「そんなに必死な健琉は初めて見たよ。すげえな、芽以ちゃんの影響力。まあ、あんだけ可愛いけりゃ心配だろうけど」

うるせー、と言いながら健琉はコンピューターの画面を追いかける。

自宅にいればいい。インフルエンザだったなら金曜日には会える。

「GPSは,,,福岡辺りで消えてるな」

「福岡?なんでそんなところ,,,」

「しかも朝の5時半、夜行列車,,,っぽい」
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