ツンデレ黒王子のわんこ姫
芽以が昼食を終えて自席に近づくと、すでに隣の席に着座していた健琉が芽以を見上げた。
「休憩ありがとうございました。」
芽以は丁寧にお辞儀をしたあと健琉の隣に着席した。
「今から、俺が手掛けている商品について説明する。2階の研究開発室を使ってるからついてこい。」
おもむろに立ち上がった健琉は、振り向きもせず歩き出した。
慌ててその後を芽以が追いかける。
傍からみると"飼い主とそれに付いていく犬"のように見えて、部署内のメンバーは苦笑した。
研究開発室は10室あって、健琉が使用しているのは研究開発室3だった。
芽以が部屋の中に入ったことを確認すると、健琉は入り口に鍵をかけた。
「この抱っこ紐についてどう思う?」
健琉は、おんぶも抱っこもできるようになっている、他社の製品を芽以に差し出して言った。
「このタイプは一見お得に見えて、着脱しづらかったり、使い方が複雑だったりして、お値段の割りに合わないんですよね。」
芽以は、幼児教育学部の授業で育児用品に関する研究をしたことを思い出し、熱弁をふるった。
健琉は、テーブル脇に腰かけて、その様子を黙って見ていたが、
ゆっくりと腰を上げると、神妙な顔で芽以に近づいてきた。
「お前さあ,,,マジで何やってるわけ?」
抱っこ紐のアジャスターを外そうと苦戦していた芽以は、キョトンとして健琉を見上げた。
くっつきそうな程、二人の顔が近づいている。
「お前は、ビッチか?,,,誰彼構わず男に尻尾振ってんじゃねえよ。」
次々に降ってくる毒舌に訳が分からず、芽以は益々キョトンとする。
「沢城」
一瞬間があった。
どうやら、健琉は同期の沢城優太のことを話しているらしい。
「優太くん,,,ですか?」
一緒にご飯を食べに行ったのが良くなかったのだろうか?
だけど、その場には女性である同期の中野もいたし、第一、優太に尻尾を振った覚えはない。
「それ」
下の名前で呼ぶのも健琉の気に触る。
「お前、沢城のことが好きなのか?」
「,,,はい」
「はぁ?」
「優しいし頼りになる同期ですよ。」
健琉はますます顔を寄せるように近づき、芽以の額に自身の額をつけてきた。
「お前は男友達とこの距離でお話すんのか?」
健琉の吐息が頬をかすめる。
「最初に、俺の気に入らないことをしたらお前をここから追い出すって、俺言ったよな。」
芽以はコクリと頷いた。
「この距離で男が考えてること」
次の瞬間、健琉は芽以の唇を奪っていた。
それは一瞬の啄むようなキスだった。
「人目がなければこのくらいのこと簡単にできるんだ。,,,ったく、お前は隙があり過ぎんだよ」
健琉は吐き捨てるように言い、再び芽以の瞳をじっと見つめてきた。
「ほら芽以、言ってみろよ、お前のご主人様は誰なんだ」
「た、健琉さんです。」
溜め息をついて、健琉は芽以から体を離すと
「今度同じような場面を見たら本当に追い出すから覚悟しとけ」
と、言いたいことだけを言って、研究開発室から出ていってしまった。
芽以は唇を押さえて、茫然とその場に立ち尽くした。
どうやら芽以の婚約者は、まさかの俺様毒舌王子だった。
「休憩ありがとうございました。」
芽以は丁寧にお辞儀をしたあと健琉の隣に着席した。
「今から、俺が手掛けている商品について説明する。2階の研究開発室を使ってるからついてこい。」
おもむろに立ち上がった健琉は、振り向きもせず歩き出した。
慌ててその後を芽以が追いかける。
傍からみると"飼い主とそれに付いていく犬"のように見えて、部署内のメンバーは苦笑した。
研究開発室は10室あって、健琉が使用しているのは研究開発室3だった。
芽以が部屋の中に入ったことを確認すると、健琉は入り口に鍵をかけた。
「この抱っこ紐についてどう思う?」
健琉は、おんぶも抱っこもできるようになっている、他社の製品を芽以に差し出して言った。
「このタイプは一見お得に見えて、着脱しづらかったり、使い方が複雑だったりして、お値段の割りに合わないんですよね。」
芽以は、幼児教育学部の授業で育児用品に関する研究をしたことを思い出し、熱弁をふるった。
健琉は、テーブル脇に腰かけて、その様子を黙って見ていたが、
ゆっくりと腰を上げると、神妙な顔で芽以に近づいてきた。
「お前さあ,,,マジで何やってるわけ?」
抱っこ紐のアジャスターを外そうと苦戦していた芽以は、キョトンとして健琉を見上げた。
くっつきそうな程、二人の顔が近づいている。
「お前は、ビッチか?,,,誰彼構わず男に尻尾振ってんじゃねえよ。」
次々に降ってくる毒舌に訳が分からず、芽以は益々キョトンとする。
「沢城」
一瞬間があった。
どうやら、健琉は同期の沢城優太のことを話しているらしい。
「優太くん,,,ですか?」
一緒にご飯を食べに行ったのが良くなかったのだろうか?
だけど、その場には女性である同期の中野もいたし、第一、優太に尻尾を振った覚えはない。
「それ」
下の名前で呼ぶのも健琉の気に触る。
「お前、沢城のことが好きなのか?」
「,,,はい」
「はぁ?」
「優しいし頼りになる同期ですよ。」
健琉はますます顔を寄せるように近づき、芽以の額に自身の額をつけてきた。
「お前は男友達とこの距離でお話すんのか?」
健琉の吐息が頬をかすめる。
「最初に、俺の気に入らないことをしたらお前をここから追い出すって、俺言ったよな。」
芽以はコクリと頷いた。
「この距離で男が考えてること」
次の瞬間、健琉は芽以の唇を奪っていた。
それは一瞬の啄むようなキスだった。
「人目がなければこのくらいのこと簡単にできるんだ。,,,ったく、お前は隙があり過ぎんだよ」
健琉は吐き捨てるように言い、再び芽以の瞳をじっと見つめてきた。
「ほら芽以、言ってみろよ、お前のご主人様は誰なんだ」
「た、健琉さんです。」
溜め息をついて、健琉は芽以から体を離すと
「今度同じような場面を見たら本当に追い出すから覚悟しとけ」
と、言いたいことだけを言って、研究開発室から出ていってしまった。
芽以は唇を押さえて、茫然とその場に立ち尽くした。
どうやら芽以の婚約者は、まさかの俺様毒舌王子だった。