甘い運命

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ドクドクドクと、心臓が早鐘を打つ。
何、私、何を考えた?
顔が熱い。多分真っ赤になってる。

それもこれも、修一さんのせいで!と心の中で悪態をついていると、ふと視界に小さな男の子。

「おねえちゃんたち、ちゅーするの?」

ん?
…………!!!

端っことはいえ、土曜日の人の多いショッピングモールで、現在イケメンに抱き締められています!!
私は当然、フリーズ。

周りには、こちらをチラチラ見るたくさんの視線。
男の子のお母さんが、すみませんと言いながら私たちから男の子を引き離す。

ざわざわする音の中で、私の耳は女性たちの声を拾ってしまう。

「うわー、イケメンの相手はあんなの?!」
「……ブスのくせに………」
「ボランティアじゃないの?あ、ホストとか……」

いやね、自分でわかってるし。

──でも、傷つかないか、と言えば、傷つくよね。

さらに、修一さんが、お金で私の相手をするような人だと思われるのは、──辛い。

私はゆっくりと、修一さんの胸を押す。
手が少し、震えていたかもしれない。

「もう、人がたくさんいるとこで、何ふざけてるんですかぁ~。
いくらペット扱いといってもやりすぎですよぉ~。」

周りに聞こえるように、少し大きな声で。
気持ちを立て直して言ったつもりだけど、僅かに声が震えちゃったかも。

修一さんを見上げると……え、怒って…?

次の瞬間、殺人的に甘い表情で、周りに聞こえるよう大きめの、甘い声で。

「ペットなわけないだろ。都は誰より可愛いよ。
俺の都、愛してるよ。」
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