甘い運命

1-14


「…え…?」

ドクドクと、心臓が早鐘を打つ。
槙原さんは、修一さんの背中越しに2、3秒私を睨んで、ふいっと目線をそらせた。
そのまま慇懃にお辞儀をして、会議室を出ていく。

──勘違いだといいけど……明らかな敵意だ。
自分のミスを言われたから─?
いや、何だかそれは違う気がする。何だろ…。

「橋本さん、どうしました?」

修一さんが、怪訝な表情で聞く。
私は首を振って、いえ、何でもと濁した。
確証もないのに、人を悪く言えない。

「早速なのですが、先週送らせて頂いたパンフレットの…」

「あれ?こちらには届いていませんよ?
先週お電話で伺っていたので、お待ちしていたのですが。」

修一さんが少しムッとしたような表情をした。
そりゃそうだ。『送る』と言ったものが、手元に届かないんだから。

でも、私も確かに送った。
会社に帰ったら伝票があるから、証明もできるはずだ。

その旨を説明して、二人で首を捻る。

「……取り敢えず、予備は持ってきているので、そちらでお話させていただいてもよろしいですか?」

二人で悩んでいても始まらない。
私はプレゼンを始めた。




──嫌な予感がする………
< 14 / 73 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop