甘い運命
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「…え…?」
ドクドクと、心臓が早鐘を打つ。
槙原さんは、修一さんの背中越しに2、3秒私を睨んで、ふいっと目線をそらせた。
そのまま慇懃にお辞儀をして、会議室を出ていく。
──勘違いだといいけど……明らかな敵意だ。
自分のミスを言われたから─?
いや、何だかそれは違う気がする。何だろ…。
「橋本さん、どうしました?」
修一さんが、怪訝な表情で聞く。
私は首を振って、いえ、何でもと濁した。
確証もないのに、人を悪く言えない。
「早速なのですが、先週送らせて頂いたパンフレットの…」
「あれ?こちらには届いていませんよ?
先週お電話で伺っていたので、お待ちしていたのですが。」
修一さんが少しムッとしたような表情をした。
そりゃそうだ。『送る』と言ったものが、手元に届かないんだから。
でも、私も確かに送った。
会社に帰ったら伝票があるから、証明もできるはずだ。
その旨を説明して、二人で首を捻る。
「……取り敢えず、予備は持ってきているので、そちらでお話させていただいてもよろしいですか?」
二人で悩んでいても始まらない。
私はプレゼンを始めた。
──嫌な予感がする………