甘い運命
1-19
そういえば、アパートの前まで送ってもらったことはあったけど、私の部屋に来てもらうのは初めてだ。
修一さんを部屋に招き入れて、食事の支度をしながらふと思った。
珍しそうにキョロキョロと視線を動かす修一さん。
スープを暖めながら、珍しいものはありますかと聞いた。
「いや、……何だか安心する部屋だな。」
「そう言ってもらえて嬉しいですよ。また遊びに来て下さい。」
安心すると言ってもらえて嬉しかったので、私はそう答えた。
すると、修一さんはちょっと言葉に詰まった。
あれ?迷惑だったかな?と思ったところで、返事が聞こえた。
「…いいのか?また来ても」
「当たり前ですよ。私ばっかり修一さんのお部屋にお邪魔して、うちがダメとか不公平ですよね。」
出来上がったスープとハムエッグ、サラダとクロワッサンとコーヒーをテーブルに並べた。
「お待たせしました、召し上がって下さい。」
「ありがとう。うまそうだ。」
美味しそうにスープを飲む修一さんの様子を見て、ちょっと元気が出てきたかなと思って安心した。
思わずニコニコしていたらしい。修一さんが怪訝そうに聞く。
「都、何かいいことでもあった?」
「ん?特に何もないですが…何でですか?」
「いや、何だか嬉しそうだから」
そうなのかな?
考えながら、私は首を傾げる。
あっそうだ、いつもやられっばなしだし、ちょっとからかっちゃえ。
「うーん、強いて言うなら、修一さんの顔を朝から見れたことですかね?」
にっこり笑って答えてみる。
瞬間、修一さんの顔が真っ赤になった。
すぐそれを隠すように、顔をそらして、手を口元に持っていく。
へ?あれ?返し、なし?!まさか照れてる?
私は逆にびっくりして、固まってしまう。
「…都のくせに、生意気だぞ。」
どこかのいじめっ子の台詞だよ、それ、と心の中で突っ込んでいると、修一さんの手が伸びてきて、髪の毛をぐしゃぐしゃにされた。
「やめてくださいよー、何なんですかもう。」
「からかう都が悪い。」
ぶつぶつ言いながら髪の毛を元に戻していると、修一さんはいつものクール顔に戻って、すまして残りの朝食を食べきった。