甘い運命
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「昨日、取引先に行くのに会社を出たのが大体15:00。
その時には、なかった。
19:30頃戻って来たときには、机の上に、重石をして置いてあった。」
──気持ち悪い。怖い。
きっと、修一さんもそう思っただろう。
ストーカーっぽくなった人が何人もいたって言ってた。
こんな気持ちなんだ。
でも何で修一さんの机?
私の机にあったら、『お前、不倫してるだろう』という脅しになったかも知れないけど、修一さんには痛くも痒くもないことだ。
いや……わからないからこそ、不気味っていうこともある。
「…イケメンも大変ですね。嫌がらせが『夜の山道を運転していたら、いつの間にか白い服を着たずぶ濡れの女の人が後部座席に乗ってた』レベルだぁ…。大丈夫ですか?」
すごくすごく心配して言った。
なのに、修一さんは吹き出した。
「何ですか?!人が心配してるってのに!」
「…くっ…くくっ……いや、まず何その例え話…どんなレベルなんだよもう、くくっ……それに、さっき疑われて怒ってたのに、すぐ俺の心配してくれるから……」
笑いすぎだ。お腹抱えてひーひー言わなくても。
私は、じとっと目線を向けた。
「だってこれ、気持ち悪いですよね?!
修一さんが気持ち悪い思いをするのに、心配するの当然でしょう?
大体、何で私の写真が修一さんと関係あるんでしょう?
取引先の人間っていうだけで、お泊まりするような友達だって普通わからないと思うんですが。」
「それなんだけどさ、最近よく出掛けてたでしょ。
ひょっとしたら、誰かに見られてたかもしれない。
特に、先々週のショッピングモール。」
ああ、そういえばあんなことがあった……
私は頭を抱えた。
誤解を与えてしまったなら、悪いことをしたかな…
そんなことを考えていると、修一さんが口を開いた。
「都、『修一さんを好きな人に申し訳ない』とか、思わなくていいから。」
「え?!何で分かったんですか?!まさかエスパー…」
「なわけないだろ。都は表情が読みやすいんだよ。
俺自身が好きじゃない人に好かれても、断るのが大変なだけだ。なかなか納得してもらえないこともあるし。
俺的には、すごく助かる。」
そうか。ストーカーがつく人だった、この人。
モテるのも考えものだということか。