甘い運命

1-45

すごく不安そうな声に、思わず顔を上にあげた。

──不安そうな、もっと言えば、泣きそうな表情。
『どうか伝わって』という声なき願いが、心に響いてくる。

色々な疑念が、私の中でストンと落ちた。

三上さんは、嘘はついてない。

「…わかりました。三上さんは、嘘はついてないと思います。金曜日の件は納得しました。」

呟くようにそう言うと、三上さんはぎゅっと私を抱き締める手に力を込めた。

「ありがとう…信じてくれて。



─でも、俺と距離を置こうと思ってたんだろ?

呼び方が『三上さん』に戻ってる。」

はっ、とした。
今まで通りの私でいると決めてたのに、もう名前で呼んではいけないと思って、心の中では三上さん呼びに戻していた。

つい、そのままが出てしまった。

「都、お願い。名前で呼んで。

今、名字で呼ばれると、…辛い。」

切ない声で、三上さん…修一さんは懇願する。

恥ずかしくて俯くと、とん、とおでこが修一さんの胸に当たった。そのまま、呟くように言う。

「ごめんなさい。…修一さん。

私のために、色々とありがとうございます……。」
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