甘い運命
2
「………で、おねーちゃん?今どこにいるわけ?」
挨拶の時に出されていたコーヒーカップを片付けに台所に移動した私を、岬が追いかけてきた。
木曜日に大量にドーナツを貰ったからと連絡もなくうちに来た岬は、平日の不在を不審に思って聞いているのだ。
連絡しなくても家にいると思われてるとこが、悲しいというか行動読まれてるというか。
たまにレイトショーに行く以外、遅くなることはほとんどない。
最近は、友達もほとんど結婚しているからずっとそうだった。
岬もビックリしただろう。
私は苦笑いしながら、コーヒーカップを洗ってかごに伏せた。
「想像通りよ。……水曜日から部屋に帰してもらえないんだもん。」
そう、公開プロポーズの後、修一さんは私の手を引いて家まで戻り、車に乗せた。
もしかしてとは思っていたけど、着いたのは私の部屋で。
すぐに週末までの着替えを準備するように言われて。
──そのまま、修一さんの部屋に留まり続けている。
「──で?ヤることはヤったわけ?」
「なっ…なな!何言ってるの!!
そんな付き合ってすぐとか、できないでしょ?」
私の顔は、一瞬で真っ赤になっていたことだろう。
「ここまでウブだと、おにーさん大変だろうな。
…イヤ、そこが可愛いとか言ってそう。
溺愛してるもんね、おねーちゃんのこと。」
──肯定も否定もできない…。
私は真っ赤な顔を隠すように、拭いたコーヒーカップを食器棚に戻した。
水曜日の夜、正直そうなるかな、と覚悟していた私。
でも、修一さんはいつものように私を抱き枕にしながら、耳元で囁いた。
「都のはじめては、きちんと親御さんに挨拶をしてからもらうよ。
だから、この三日間で覚悟しておいて。
───半年待った。もう待てないから。」
「え?それって、ずっと私としたかった、ってことですか?!」
驚く私に、修一さんは、ちょっとバツが悪そうな顔をした。
でも、正直に答えてくれる。
「俺、添い寝を頼んだ時には、もう都のこと好きだって自覚してた。
だから、どうしても起こる自然現象がバレないように、毎回必死だったんだぞ?
俺の鉄の自制心を、誉めてもらいたいくらいだ。」