甘い運命
「修一さん。」
「ん?」

少し首を傾げて、私の話を聞く体制の修一さん。
頭にあった手を左頬に導いて、頬擦りする。
こんな風に素直に甘える自分がいるのが、いまだに信じられない。

「あの時、多分私の方がボロボロだったと思います。

─あのままダメになってたら、多分、私は一生恋もせず一人で生きたと思います。

修一さんはいつか立ち直ったろうけど、私は無理です。
もう絶対誰かを好きになったりしない、そう決めてました。」

「─都…。」

「そのくらい、重い『気持ち』なんです。
自分でも、ちょっと気持ち悪いくらい。

──こんな私でも、好きでいてくれますか?」

しっかりと、お互いに絡まった視線。
そこに嘘なんか、存在する余地はない。

左手を私の右頬に添えて、両手で私の顔を少し上に向けた修一さんは、今までで一番、幸せそうに微笑んだ。

そして、私の大好きな声で、甘く告げた。

「もちろん。でも俺の『気持ち』の方が、都の百倍重いけどね」

コツン、と額をあわせて、二人で笑いあう。
そして、月明かりの中で、どちらからともなく唇を重ねる。

私たちは、きっとこれからも、こうやって何度もお互いの気持ちを確かめ合う。
お互いが不安になる度に、何度でも。

それは、信じるとか信じてないとかじゃなくて。
私たちが、これからもずっとお互いを大切にしていく証として。

私たちの 新しい誓いを、明るい月が柔らかく照らしていた──




fin.

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