曇り、ときどき雨。君に、いつでも恋。

私の祈りはまったく無駄だったらしく、今日も私の目の前には不機嫌そうな今井さんがいた。


「昨日言ったこと、覚えてるな?

もっとテキパキ、笑顔。」



「はい。気をつけます。」


「ん。」


はあ~~~~~~~~~~~。


今日もまた怒られたらイヤだな・・・。


どよーんとあたしの心は沈んだ。


まあ仕方ない、やらなきゃ。




「佐藤さん、3番よろしく!」

「佐藤さん、レジ!」

「佐藤さん、あそこ片付けといて!」


今日も昨日みたいに忙しかった。



途中で何回か、今井さんに注意もされて。

「テーブルもっときれいに拭いて。」
「もっと丁寧にお料理置いて。」




だからもう、あたしはくたくただった。





「お疲れ様でした。」



今井さんに見つからないように、さっさと店を出ようとすると、

「ちょっと。」


あーあ。
今井さんに呼び止められた。

ため息をつきたいのをこらえて、あたしが足を止めて振りかえると、今井さんはあたしのところまで歩いてきて、口を開いた。




「オーダーとるの、遅い。」




「すみません。練習します。」



やっぱり、怒られた。




「では失礼します。」




あたしは小さく礼をして、口をきゅっと結んで店を後にした。


オーダーとるの遅いって言われてもっ・・・。
あたふたしてるわけじゃないし、すっごく遅いわけでもないのに!
確かにまわりの店員に比べたら遅いけど、これくらいの遅さはまだ許容範囲じゃない?
だってまだ、2日目だよ!?





それに、あたしより前からいる、高校生っぽいハギタさんなんて、今日オーダーミスしてたのに、それはなにも言わないの?


なんであたしはこんなに怒られなきゃいけないの?

それに、他の人が見てないところで怒られる!
なん、で?

いろんな人にこうやって、注意しまくってるの?
誰も見てないところで?



でも今井さんが、バイトの時間外で他の人と話してるの、今日と昨日ではまだ1回も見てない。


今井さんに、あたし嫌われてるのかな。
なんで、だろ。
新人いじめるのが好きとか?




バイト、あたし続けられるかな・・・。


他のバイト、探そうかな・・・。



今のところ、すごく雰囲気いいレストランなのにな。

今井さんさえ、いなければっ・・・。
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