王子と私の恋愛事情。
「ちょ、だれ………
大きな声を出しかけた私を抱き寄せ、口に手を押し付けてくる。
ふわっと嵯峨くんのあの香水の匂いがする。
「しー…あんま大きい声出すな。
ばれるだろ。」
やっぱり嵯峨くん。
言われるがままにそっと息を潜めてじっとしてる。
「え〜逃げちゃった。
せっかく嵯峨くんの彼女の顔どんなのか見れると思ったのに…」
そう言いながらさっきの女の子達は私がさっき通った道を歩いていく。
声が聞こえなくなったところで嵯峨くんが私から離れた。
「な、なんで居るの?」
「なんでって莉奈が俺の話も聞かずに逃げるから。」
「へ、話?」
さっきの女の子たちから逃げるので精一杯だった私はすっかり嵯峨くんに怒ってた事を忘れてた。
そんな私の間抜け面を見て嵯峨くんはとっても大きなため息を1つつく。
「どんだけ都合のいい頭してんだよ。
あのな、嫌いな奴に服なんてあげたり、そもそもデート誘ったりなんかしねぇだろ普通。」
少し面倒くさそうに嵯峨くんがそう言う。
「で、でも。嵯峨くん女の子にこういう事するの慣れてそうだなって思って…
さっき美容院で素っ気なかったからつい考えちゃって」
「なんだよ、素っ気なかったとかそんな事」
「そんな事って酷い!目だってすぐ逸らしたじゃん!」
こうやって話してる時だって私と少し距離を置いてあまり目も合わそうとしない。