君の笑顔は眩しく、ときどきせつない
どんどん音が近づいて来てる気がする。



(交響曲第5番ハ短調…)



コンクールの課題曲によく指定される曲だ。

それに、なぜだか吸い込まれる。


力強いのになぜか優しくて、


爽やかなのにどこか寂しくて。


方向を変えて聴けば姿を変える音。



(芸術科の特待生かな…こんな素敵な音)





ピアノ専攻特別教室の扉から覗くと、
そこには少女がいた。




(1年生??)



聖原学院の制服は学年ごとにネクタイの色が違う。

彼女の横に脱ぎ捨てられたブレザーと共におかれているネクタイは俺と同じく緑色だった。

ショートカットに少しやけた肌。

ペダルにかけた足には少し筋肉がついている。

演奏家にしては少し元気すぎる体だ。

俺が今までみてきた演奏家は肌は白く、
手足は枝のように
少しさわったら折れちゃうんじゃないかっていうくらい細く長い。そんな人たちが多かった。


なのに彼女は…


< 11 / 112 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop