君の笑顔は眩しく、ときどきせつない
「わたしは永澤李与!」

その名前を聞いた瞬間、みなとの、動きは止まった。
そしてゆっくり振り向いた。


「どうして?永澤が。」

「私もミスをした。バイオリンのデュオでミスを。世界大会につながるコンクールだった。この日のためにやってきた。準備は万端だった。何百回もやってきた。練習だって、指から血が出るほど、手首が、腫れるまでやってきた。」


彼女の声は少し震えていた。




「なのに、本番わたしは、一小節間違えて演奏してしまった。私はみんなの期待を裏切った。今年は世界で演奏できるって思ってたペアのことも裏切った。」

「だから、永澤李与は突然姿を消した。」

みなとはなにかに納得したように呟いた。
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