君の笑顔は眩しく、ときどきせつない
いつもより賑やかな教室の扉を開けると、
クラスメイト(と呼ぶほど関わりはない)が、
俺と永澤に目を向けた。
すると一人の女子が向かってくる。
しかも、永澤ではなく俺に向かって。
入学して半年たったのにも関わらず、
名前すら知らない彼女は、
決まり悪そうに言った。
「あの、お兄さんのサインがほしくて。お願い!」
「私も!大ファンなの!」
「お前の兄ちゃんって萩尾つばさなんだろ!」
一人の女子に続きクラス中の生徒が、
俺を取り囲んだ。
「はいはいはいはい!ストーップ!」
そこに割って入ってきたのは芳樹だった。
いきなり出てきた脇役にクラスの生徒は、
きょとんとしていた。
芳樹はその"群れ"にニコッと笑い、
右手で俺の手を、
左手で永澤の手を掴み、
教室から飛び出した。