男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「お食事を持ってきますね。まだ横になっていてください」

「あ、あの……」


扉に向かうベアトリスは振り返る。後ろでひとつに結んだ腰まである三つ編みが揺れる。


「女性ということは内緒にしておきますから。大丈夫です。アベル侍従もご存じではありません」
 

ベアトリスはにっこり微笑んで部屋を出て行った。



食事が終わる頃、アベルが入室してきた。クロードに様子を見てくるようにと命令されたのもあるが、心配だった。


「食事中だと聞いてね。まだ熱があるような顔をしている」

「もう大丈夫です。ご迷惑をおかけしてもうしわけありません」


 いつも通りのアベルに、侍医やベアトリスはなにも話していないのだとミシェルは思った。


「明日には治っていますから」
 

今日も休みをもらい、明日も仕事をしないわけにはいかない。


「いや、まだ無理だ。明日も休んでいなさい」

「でもアベル侍従に負担が……」

「身体は大事にしないといけない。私は大丈夫だからゆっくりしていなさい」
 

それもクロードから指示されたことだった。明日に体調が戻るのは無理だろう。休ませるようにと。


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