男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
第三章 懸念と後悔と溺愛
いつもよりもミシェルは早く起きて支度を済ませていた。
そしてアベルがやって来る時間になる少し前に廊下に出て待った。
隣の部屋の扉が開き、いつものようにビシッと藍色の侍従服を着たアベルが姿を見せる。
ミシェルの姿にアベルは驚く。
「フランツ、大丈夫なのかい?」
「はい。もう平気です」
「それでは行こう」
アベルと共に国王の私室へ向かうミシェルは緊張していた。
(クロードが陛下だということは忘れるのよ)
馬の背で力強い腕で守られるように走らせたクロードがずっと頭から離れられないのだが。
いつものようにクロードは起きており、アベルの後ろに現れたミシェルをちらりと見ただけで、手にしていた書類に目を落とす。
アベルはお茶を淹れ始め、ミシェルはそれを見つめていた。
「僕が持って行っていいですか?」
「……病み上がりだが、大丈夫かい?」
「はい」
ミシェルはお茶を持って行った時に、自分は女なのだと告白しようと決めていた。
「では頼むよ」
緊張はしていたが、町でクロードの一面を見ているせいか、ちゃんと話せそうだ。
ミシェルはお茶を運び、丁寧にクロードの前に置く。