男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
ヴァ―ノンが執務室を訪れた。毎日、王城の警備などの報告をしている。

今日のクロードの機嫌の良さにヴァ―ノンは首を傾げる。
 
この様子であれば、時折クロードが単独で町へ出かけることをやめてもらうように進言しても叱責されないのではないかと考える。
 
クロードは十分に強いが、ひとりで出かけてなにかあったら大変なことになる。

しかも二日前に突然川に落ちた髪飾りを探すように命じられ、ヴァ―ノンは十人余りの第一騎士団精鋭たちを連れて捜索したのだ。
 
三十分後、無事に髪飾りを見つけクロードは満足していた。
 
しかし、女物の髪飾りをなぜ川で探すことになったのかはヴァ―ノンは知らされずにいた。


(町に好きな女がおられるのか……)
 

書類を読んでいたクロードはまだいるヴァ―ノンに気づき顔を上げる。


「なんだ? まだなにかあるのか?」

「陛下、髪飾りの件でございますが……」
 

おそるおそるヴァ―ノンは口にした。


「ああ、ご苦労だったな」

「……あの髪飾りは女物。陛下は町に意中の女性でもいらっしゃるのでしょうか?」
 

叱責を覚悟のうえで尋ねるヴァ―ノンだ。そんなヴァ―ノンの心配をよそにクロードは鼻で笑う。


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