男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
「なんだ? 心配をしているのか?」

「それは陛下が町へ行かれるたびに心配しています。次回からは私もお供させてください」

「ところで、今義兄はどこにいる?」


話をはぐらされたのか、突然聞かれてぐうの音も出ないヴァ―ノンだ。


「パスカルさまの行動は把握してはおりません。現在はおそらくブルーニ城に滞在中かと思われますが」
 

パスカルは王城の北側の棟に住んでいるが、社交界シーズンではない時は侍女を引き連れ気ままな生活をするために城へ行く。
 
ブルーニ領というのは、パスカルの生母が生まれ育った土地で、王都から馬車で二日ほどかかるところにある。
 
現在側室であるパスカルの生母、アンヌ妃はこの城に住んでいた。
 
ベルナディス国には社交界シーズンがあり、ベルナディス城の最大の舞踏会を皮切りに、初春から夏にかけて上流階級の貴族たちが夜会を主催する。
 
社交界シーズンはあと十日ほどで始まり、もうすぐパスカルは王城へ戻って来るだろう。
 
そうなると心配事が出てくる。イヴォンヌが憂虞した、ミシェルのことだ。美しいものを収集する性癖のあるパスカルにミシェルが会わないようにしなければならない。


「義兄がいつ戻って来るか確認してくれ。行っていい」

「はっ、御意」
 

ヴァ―ノンは頭を下げ、クロードの執務室を出た。
 

扉が閉まってから、結局大事なことをはぐらかされてしまったのだと気づき、苦笑いを浮かべるヴァ―ノンだった。


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