男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
そんなことを考えていると、歩いてくるクロードと目と目がバチッと合ってしまい、ミシェルは慌てて頭を下げる。

クロードはミシェルの前を通り過ぎ、アベルが引いた椅子に腰を下ろす。


「今日は暑いくらいなので、冷えた葡萄酒をご用意しておりますが」
 

アベルがうやうやしく口にする。


「そうしてくれ。フランツ」

「は、はいっ!」
 

まさか名前を呼ばれると思っていなかったミシェルは肩を大きく跳ねさせた。


「そこに座れ」
 

クロードは自分の席の斜め右手を手で示す。ミシェルは驚いてその場から動けない。


「わ、私は侍従見習いでございます。陛下とご一緒することは――」

「ごちゃごちゃ言わずに座れ」
 

クロードは困惑するミシェルを一蹴する。
 
急いでアベルに視線を動かしたミシェルは目くばせで座るように言っているのがわかった。


「し、失礼いたします」


ミシェルはクロードの席の斜め右手の席に座った。
 
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